本記事では、年齢や文化、障害の有無や能力の違いにかかわらず、できる限り多くの人が快適に利用できることを目指すユニバーサルデザインの考え方について、アクセシビリティ、ピクトグラム、インフォグラフィックといったキーワードを通して分かりやすく解説します。
1. ユニバーサルデザインの基本理念

この章では、ユニバーサルデザインがどのような思想に基づいているのかを整理します。誰か特定の人だけのためではなく、できる限り多くの人にとって使いやすい仕組みを最初から目指す、という考え方が中核にあります。
ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインとは、年齢や文化、言語、障害の有無、身体能力の違いなどにかかわらず、可能な限り多くの人が同じ製品やサービスを安全かつ快適に利用できるように設計する考え方です。ポイントは「特別な配慮を後から追加する」のではなく、「最初から誰もが使いやすい形を目指す」ことにあります。バリアフリーが主に障害のある人のための障壁を取り除く発想なのに対して、ユニバーサルデザインは利用者全体を視野に入れて設計を行う点が特徴です。
例えば、段差のないスロープ付きの入口は、車いす利用者だけでなく、ベビーカーを押す保護者や、重い荷物を運ぶ人、高齢者にとっても便利です。同じように、文字だけでなく図や色で情報を示す仕組みは、言語が分からない人や小さな子どもにも伝わりやすくなります。このように、ユニバーサルデザインは「特定の人のための特別扱い」ではなく、「誰にとっても使いやすいデザイン」を通じて、結果的に社会全体の利便性を高めていく考え方だと捉えると理解しやすくなります。
2. 情報へのアクセスを広げるアクセシビリティ

この章では、ユニバーサルデザインを実現するうえで重要なキーワードであるアクセシビリティについて説明します。情報に「たどり着けるかどうか」「利用できるかどうか」を考える視点がアクセシビリティです。
アクセシビリティ
アクセシビリティとは、年齢や障害の有無、利用環境にかかわらず、誰もが情報やサービスにアクセスしやすい状態になっているかどうかを示す概念です。例えば、視覚に障害がある人がスクリーンリーダーを使ってWebページの内容を音声で読み上げられるか、色覚に特性のある人でも色の違いだけに頼らず情報を区別できるか、といった観点が含まれます。
アクセシビリティを高めるためには、文字サイズを調整できるようにする、コントラストの高い配色にする、画像には代替テキストを付ける、キーボードだけでも操作できるようにするなど、具体的な工夫が求められます。これらの工夫は、障害のある人だけにとって有益なものではなく、例えば小さな画面で閲覧している人や、高齢で細かい文字が読みづらい人にとっても使いやすさの向上につながります。ユニバーサルデザインの観点からは、「一部の人のための特別な設定」ではなく、「誰もが使いたいときに選べる標準的な機能」としてアクセシビリティを整えることが重要になります。
3. 誰にでも伝わる視覚表現の工夫

この章では、文字に頼りすぎず、直感的に内容を伝えるための視覚的な表現方法として、ピクトグラムとインフォグラフィックを取り上げます。どちらも、ユニバーサルデザインを支える重要な要素です。
ピクトグラム
ピクトグラムとは、トイレマークや非常口のマークのように、単純化した図や記号で意味を伝える視覚的シンボルのことです。言語によらず意味を理解してもらいやすいようにデザインされているため、外国人観光客や小さな子ども、文字を読むのが苦手な人でも直感的に内容を把握しやすいという特徴があります。駅や空港、公共施設などでピクトグラムが多用されているのは、このような理由からです。
ユニバーサルデザインの観点では、ピクトグラムの形や色、配置も重要になります。同じ種類の案内は同じデザインに統一し、十分な大きさとコントラストで表示することで、遠くからでも識別しやすくなります。また、多くの人が慣れ親しんだデザインを採用することも大切です。独自性を出そうとして意味が分かりにくい図柄にしてしまうと、本来の目的である「誰にでも伝わる」から離れてしまうためです。
インフォグラフィック
インフォグラフィックは、文章や数字の情報を図やイラスト、アイコン、グラフなどと組み合わせて、視覚的に分かりやすく表現したものを指します。例えば、長い説明文で書くと理解しにくい統計データを、棒グラフや円グラフ、アイコンを使って一目で比較できるようにした図がインフォグラフィックの代表例です。
インフォグラフィックの狙いは、情報量の多い内容でも、要点や関係性を視覚的に整理して、短時間で理解しやすくすることにあります。文字だけの資料だと、読解力や慣れの差によって理解度が大きく変わってしまいますが、図や色を使って構造化することで、幅広い人に情報を届けやすくなります。ただし、装飾を増やしすぎるとかえって分かりにくくなるため、強調すべきポイントを絞り込み、「見れば分かる」レベルまで情報を整理することがユニバーサルデザインの観点からは重要です。
まとめ
この章では、ユニバーサルデザインの考え方と、アクセシビリティ、ピクトグラム、インフォグラフィックの役割を振り返ります。ユニバーサルデザインは、年齢や文化、障害の有無や能力の違いにかかわらず、できる限り多くの人が同じサービスや情報を快適に利用できるようにすることを目指す考え方でした。そのねらいは、特定の人のためだけの配慮ではなく、社会全体の使いやすさを底上げすることにあります。
その実現のためには、まずアクセシビリティを高め、誰もが情報や機能に「たどり着ける」状態を作ることが欠かせません。画面のコントラスト、文字サイズ、操作方法の多様さなどを整えることは、障害の有無を問わず多くの人にとっての利便性向上につながります。さらに、ピクトグラムやインフォグラフィックのような視覚的表現を活用することで、言語や読み書きの能力に依存しない、直感的で分かりやすい情報提供が可能になります。
ユニバーサルデザインは、特別な技術だけが必要というわけではなく、「どのような人がどのような状況で使うか」を想像しながら設計する姿勢が何よりも重要です。ITパスポート試験では用語の意味を押さえることが求められますが、実務ではその背後にある「できる限り多くの人にとっての使いやすさ」を常に意識することが求められます。日常の中で見かける案内板やWebサイト、アプリなどを観察し、「どんな工夫がユニバーサルデザインにつながっているか」を考えてみることが、理解を深める第一歩になるでしょう。

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