本記事では、情報を可視化して構造化し、構成要素同士の関係を分かりやすく整理するための「情報デザイン」について、デザインの原則やLATCHの法則、シグニファイア、構造化シナリオ法、UXデザインといった代表的な手法を通して、その考え方と具体的な活用イメージを解説します。
1. 情報デザインとは何か

この章では、そもそも情報デザインとは何を目指すものなのかを整理します。単に見た目をきれいにするだけでなく、情報を可視化しながら構造化し、構成要素の関係が一目で分かるようにするという考え方が土台になります。
情報を可視化して整理する考え方
情報デザインの出発点は、「頭の中にある情報を外に取り出し、見える形にして整理すること」です。文章や数字だけの状態では、量が増えるにつれて全体像がつかみにくくなります。そこで、図や表、レイアウトなどを使って情報を可視化し、どの情報がどことつながっているのかを明らかにしていきます。
さらに、情報をただ並べるだけでなく、グループ分けや優先順位付けを行い、構造として整理することが重要です。例えば、手順書であれば「準備」「操作」「確認」といった大きなブロックに分け、その中に細かい手順を配置していきます。このように構造化された情報は、必要な部分を素早く見つけやすく、読み手にとって理解しやすい形になります。
2. レイアウトに役立つデザイン原則

この章では、画面や紙面のレイアウトを分かりやすく整えるための「デザインの原則」を扱います。ここでいうデザインは、芸術的なセンスよりも、情報を読み取りやすくするためのルールという意味合いが強いことを意識すると理解しやすくなります。
デザインの原則
代表的なデザインの原則として、近接、整列、反復、対比の四つが挙げられます。近接とは、関連する項目同士を近くにまとめて配置することです。例えば、見出しとその本文、ボタンと説明文などを近づけることで、何がひとかたまりの情報なのかが自然に伝わります。これが守られていないと、読み手は「どの説明がどの要素に対応しているのか」を探す必要が生じ、理解に余計な負荷がかかってしまいます。
整列は、文字や図形の位置をきちんと揃えることを指します。左揃えや中央揃えなど、ルールをそろえて配置すると、画面全体に一体感が生まれ、視線の流れもスムーズになります。反復は、色やフォント、見出しのスタイルなどを繰り返し使うことで、情報の規則性を示す考え方です。毎回違うデザインにすると、何が重要か分かりにくくなりますが、同じパターンを繰り返すことで、読み手は「このデザインは見出し」「この色は強調」などと自然に理解できるようになります。
対比は、重要な部分とそうでない部分の違いをはっきりさせることです。文字サイズや太さ、色の濃さなどを変えることで、「ここがポイント」「ここは補足」といった区別が生まれます。対比が弱すぎると、すべてが同じ重さで並んで見えてしまい、何を重点的に読めばよいのかが分かりにくくなります。情報デザインでは、これら四つの原則を意識するだけでも、資料や画面の分かりやすさを大きく改善することができます。
3. 情報を整理するLATCHの法則

この章では、情報をどのような切り口で並べ替えれば分かりやすくなるのかを示す「LATCHの法則」を取り上げます。単に情報量が多いだけでは理解しにくいため、整理の軸を意識して構造化することが重要です。
LATCHの法則
LATCHの法則は、Location、Alphabet、Time、Category、Hierarchyの頭文字を取ったものです。Locationは場所、Alphabetはアルファベット順や五十音順、Timeは時間、Categoryはカテゴリ別、Hierarchyは重要度や規模などの序列を表します。情報を整理するときは、この五つのいずれか、または組み合わせを使って並べ替えると分かりやすくなると考えます。
例えば、店舗一覧を見せる場合、地図上のLocationで整理すれば「どこにあるか」が直感的に分かります。社員名簿ならAlphabetや五十音順で並べると検索しやすくなりますし、プロジェクトのスケジュールはTimeに沿って時系列で並べるのが自然です。商品カタログであれば、Categoryごとに分けてページを作り、さらにHierarchyとして人気順や価格帯順に並べるなどの工夫もできます。
このように、LATCHの法則は「どんな軸で情報を並べれば、利用者にとって探しやすく、理解しやすいか」を考えるためのチェックリストとして利用できます。資料や画面を設計するときに、「今の並び方はLATCHのどれに当たるか」「別の軸で整理した方がよいか」を意識すると、情報構造をより適切に設計できるようになります。
4. 操作を導くシグニファイア

この章では、ユーザに「どのように操作すればよいか」を示す手がかりとなる「シグニファイア」という考え方を説明します。情報デザインは内容だけでなく、操作方法を分かりやすく伝えることも重要な役割です。
シグニファイア
シグニファイアとは、「ここを押せばよさそう」「ここから操作できそう」といった、操作の手がかりを与える見た目やサインを指します。例えば、立体的に描かれたボタンや、リンクであることを示す下線付きの文字、スマートフォンのメニューボタンに付いた三本線のアイコンなどは、シグニファイアの典型例です。これらがあることで、初めて触れる画面でも直感的に操作方法を推測できます。
もしシグニファイアが不足していると、ユーザはどこを触ればよいか分からず、操作に戸惑ってしまいます。単なるテキストだけが並んでいる画面では、どこがボタンでどこが説明文なのか見分けがつきません。そのため、ボタンは周囲と色や形を変えて目立たせ、カーソルを合わせたときに変化を付けるなど、「ここが操作できる場所だ」と分かるサインを意識的に設計することが大切です。
また、シグニファイアは見た目だけでなく、ラベルや説明文も含みます。「削除」「保存」などのボタン名を分かりやすく付けることや、「ここをクリックして詳細を見る」といった補足説明を表示することも、ユーザにとっての手がかりになります。情報デザインでは、内容を整理するだけでなく、利用者が迷わず操作できるようにシグニファイアを丁寧に用意することが求められます。
5. シナリオから考える情報構造

この章では、利用者の行動や文脈を物語のように描き、その流れに沿って情報構造を設計する「構造化シナリオ法」について解説します。単に画面単位で考えるのではなく、利用者のストーリーに沿って全体を組み立てる発想がポイントになります。
構造化シナリオ法
構造化シナリオ法は、ユーザの行動や目的をシナリオとして書き出し、その流れに合わせて必要な情報や機能を整理していく手法です。例えば、「ユーザが旅行を計画してから予約し、当日チェックインするまで」といった一連の流れを物語として描き、その各場面でどのような情報が必要になるかを明らかにしていきます。
このシナリオをもとに、画面構成やメニュー構造を設計することで、利用者の行動に自然に寄り添った情報デザインが実現できます。途中で別画面に飛ばされて迷子になるような構成ではなく、「次に何をすればよいか」がシナリオの流れから自然に分かるようになるためです。特に、複雑な業務システムや、多くのステップがあるサービスでは、構造化シナリオ法によって抜け漏れの少ない設計がしやすくなります。
さらに、シナリオには、利用者の感情や困りごとを併せて記述しておくと効果的です。「ここで不安になりやすいので、確認メッセージを分かりやすくする」「ここで達成感を与えるメッセージを表示する」といった工夫を盛り込めば、単なる操作手順を超えた、体験としての情報デザインにつながります。
6. 体験全体を設計するUXデザイン

この章では、情報デザインをより広い視点で捉え直す「UXデザイン」について説明します。UXはUser Experienceの略で、ユーザがサービスを利用することで得る体験全体を意味します。
UXデザイン
UXデザインは、画面の見た目や操作性だけでなく、サービスの利用前から利用後までを含めた「体験の質」を設計する考え方です。例えば、アプリをインストールする前の口コミや紹介ページ、初回起動時の案内、日常的な利用のしやすさ、トラブル時のサポート体制など、ユーザが接するあらゆる接点がUXの対象になります。
情報デザインは、その中でも特に画面や資料といった「情報の見せ方」を扱う領域ですが、UXデザインの文脈で考えると、「ユーザが目的を達成するまでの体験をどれだけスムーズに支えられているか」という視点が加わります。操作手順が短くても、不安を感じるメッセージが表示されれば体験は悪化しますし、多少手順が多くても、分かりやすい説明や安心感のあるフィードバックがあれば、満足度は高くなります。
そのため、UXデザインでは、ユーザのニーズや感情をリサーチし、その結果を踏まえて情報構造や画面レイアウト、シグニファイアなどを総合的に設計していきます。情報デザインを学ぶ際には、「単に見やすい資料を作る」段階から一歩進んで、「ユーザにとって気持ちのよい体験とは何か」を意識することが重要です。
まとめ
この章では、情報デザインの考え方と代表的な手法を振り返ります。情報デザインは、情報を可視化し、構造化し、構成要素間の関係を分かりやすく整理するための取り組みでした。その目的は、単に見た目を整えることではなく、利用者が迷わず情報を理解し、行動につなげられるようにすることにあります。
そのための具体的な手法として、近接、整列、反復、対比といったデザインの原則によるレイアウトの工夫、LATCHの法則による情報整理の軸の決定、操作の手がかりとなるシグニファイアの設計、構造化シナリオ法によるストーリーに沿った情報構造の設計、そして体験全体を見渡すUXデザインの視点などがありました。これらはそれぞれ別々の概念ですが、実際の画面設計や資料作成では組み合わせて使うことで、より分かりやすく使いやすい形へと近づけていくことができます。
情報デザインの考え方を身につけておくと、プレゼン資料や業務マニュアル、Web画面など、日常のさまざまな場面で役立ちます。ITパスポート試験では各用語の意味を問われることが多いものの、実務では「何のためにこの手法を使うのか」「利用者にどのような体験を届けたいのか」という視点がさらに重要になります。今回整理した考え方と手法を土台として、身の回りの情報の見せ方を意識的に観察し、自分なりの情報デザインに生かしていきましょう。


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