本記事では、アルゴリズムをどのように人間やコンピュータに分かりやすく表現するかに着目し、流れ図(フローチャート)と擬似言語の特徴を押さえながら、「式」「条件式」「演算子」「代入」「入出力」「手続」「関数」「引数」「戻り値」「データ型」などの用語を一つずつ丁寧に解説していきます。
1. アルゴリズムを表す二つの道具

この章では、アルゴリズムを表現する代表的な方法である流れ図(フローチャート)と擬似言語について、役割と違いを全体的に整理します。
流れ図(フローチャート)
流れ図(フローチャート)は、処理の流れを図で表したものです。楕円や四角、ひし形などの記号を矢印で結び、「どの順番でどの処理を行うか」「どこで条件分岐をするか」を視覚的に示します。スタートから矢印をたどるだけで、アルゴリズム全体の流れが一目で分かるのが特徴です。
フローチャートは、プログラムを書き始める前の設計段階や、処理の流れを説明したいときに役立ちます。特に、順次・選択・繰返しといった基本構造を視覚的に確認できるため、アルゴリズムの理解を助ける道具として有効です。ITに詳しくない人とも共有しやすい点も、図による表現ならではの利点です。
擬似言語
擬似言語は、実際のプログラミング言語に似た書き方でアルゴリズムを表現するための「なんちゃって言語」です。厳密な文法は決まっておらず、日本語や数学的な記号を交えながら、「if ~ then」「for ~」などの書き方で処理の内容を記述します。実際にコンピュータで実行することは想定しておらず、人が読んで理解しやすいことが目的です。
擬似言語を使うと、フローチャートよりも細かな処理を文章で表現しやすくなります。また、実際のプログラミング言語へ書き換える際の橋渡しにもなります。試験の問題では、擬似言語で書かれたコードの動きを追う形式がよく出てくるので、「どこが条件分岐で、どこが繰り返しなのか」を意識しながら読む練習が重要です。
2. 計算や条件を表す書き方

この章では、アルゴリズムの中で計算や条件を表すときに使う「式」「条件式」「演算子」「代入」について説明します。
式
式とは、数値や変数、演算子を組み合わせて計算の内容を表したものです。例えば、「A + B」「(X – Y) × 2」といった形が典型的な式です。式を評価すると具体的な値が得られ、その結果を使って次の処理を行ったり、画面に表示したりします。式は、アルゴリズムの中で「計算したい内容」を表現する基本的な単位です。
式は数値だけでなく、文字列や真偽(真・偽)などを扱うこともあります。例えば、「姓と名をつなげる」「条件が満たされているかどうかを判定する」といった処理も、広い意味では式の一種です。どのようなデータを扱い、どの演算子を用いるかによって、式の意味する処理が変わっていきます。
条件式
条件式は、「条件が成り立つかどうか」を判定するための式で、結果は必ず「真(true)」か「偽(false)」のどちらかになります。例えば、「点数 >= 80」「在庫数 == 0」「会員区分 != ‘一般’」などが条件式です。選択構造(if文など)や繰返し構造(while文など)の判断材料として使われます。
条件式を正しく読み取ることは、アルゴリズムの動きを理解するうえで非常に重要です。複数の条件を「かつ(AND)」「または(OR)」で組み合わせる場合は、どの条件がどの範囲にかかっているかに注意が必要です。カッコの有無や、演算子の優先順位を意識しながら整理すると、誤解を防ぐことができます。
演算子
演算子は、式の中で値どうしを計算したり比較したりするための記号やキーワードです。代表的なものとして、「+」「-」「×」「÷」などの算術演算子、「==」「!=」「>」「<」などの関係演算子、「AND」「OR」「NOT」などの論理演算子があります。演算子の種類によって、扱えるデータ型や意味が異なります。
演算子には優先順位があり、同じ式の中で複数の演算子を使った場合、どの順番で計算するかが決まっています。例えば、「2 + 3 × 4」は掛け算が先に行われ、結果は「2 + 12 = 14」になります。優先順位が紛らわしいときは、カッコを使って「(2 + 3) × 4」のように明示することで、意図をはっきりさせることが大切です。
代入
代入は、変数に値を入れる操作を表します。擬似言語では、「X ← 10」「合計 ← 合計 + 金額」といった形で書かれることが多いです。左側に「入れ物(変数)」、右側に「入れたい値や式の結果」を書き、「右側を計算して左側に入れる」という意味になります。
代入は、アルゴリズムの中で値を記録したり更新したりするための基本操作です。特に、繰返し処理の中で「合計を少しずつ足していく」「カウンタを1ずつ増やす」といった処理では、代入が何度も登場します。矢印やイコールが「どちら向きの意味なのか」を意識しながら、値の変化を追いかける練習が重要です。
3. プログラムを分かりやすくする要素

この章では、アルゴリズムを人が読みやすくし、コンピュータとのやり取りを明確にする「注釈」と「入出力」について解説します。
注釈
注釈は、プログラムの中に書き込む「人間向けのコメント」です。処理の意図や注意点、補足説明などを文章で残しておくことで、後から自分や他人がコードを読んだときに理解しやすくなります。擬似言語では、「*」や「//」など、注釈であることを示す記号が使われることが多いです。
注釈はコンピュータにとっては無視されるため、処理の結果には影響しません。しかし、保守や改修の場面では非常に重要な役割を果たします。なぜそのアルゴリズムを採用したのか、どんなケースを想定しているのかといった情報を簡潔に書いておくことで、将来のトラブルを防ぐことにつながります。
入出力
入出力は、プログラムと外部との情報のやり取りを指します。ユーザがキーボードから値を入力したり、画面や印刷物に結果を表示したりするのが典型的な例です。擬似言語では、「入力する」「表示する」といった日本語の形で書かれたり、「READ」「WRITE」などのキーワードで表現されたりします。
入出力の内容を整理しておくと、アルゴリズムの目的が明確になります。どのタイミングで何を入力し、その結果として何を出力したいのかを意識しながらフローチャートや擬似言語を読むと、処理の流れを理解しやすくなります。また、問題文では「入力例」「出力例」が示されることも多いので、具体的な値を当てはめてシミュレーションする練習も大切です。
4. 手続きと関数による処理のまとまり

この章では、処理をまとめて再利用しやすくするための考え方として、「手続」「関数」「引数」「戻り値」について説明します。
手続
手続は、ある処理のまとまりに名前を付け、ひとまとまりとして呼び出せるようにしたものです。例えば、「請求書を印刷する」「会員情報を表示する」といった、一連の流れを一つの手続として定義しておくイメージです。擬似言語では、「手続 ○○ を呼び出す」のような形で表現されます。
手続を使うと、同じ処理を何度も書かずに済むため、プログラムを簡潔に保ちやすくなります。また、処理のまとまりごとに役割を分けられるので、全体の構造が見えやすくなります。アルゴリズムの問題でも、「この部分は一つの手続きになっている」と意識して読むと、長いコードに圧倒されにくくなります。
関数
関数は、「入力を受け取り、結果を返す」タイプの処理のまとまりです。数学の関数と同じように、「f(x) = x × 2」のように、ある入力に対して決まった出力を返します。擬似言語では、「関数 ○○(引数) 戻り値: △△」といった形で書かれ、他の処理から使われます。
関数の特徴は、「値を返す」ことです。例えば、「最大値を求める関数」「税込金額を計算する関数」などは、計算結果を戻り値として返します。関数を上手に使うと、「ここでは何を計算しているのか」がはっきりし、アルゴリズム全体の見通しが良くなります。
引数
引数は、手続や関数に渡す入力値のことです。例えば、「税込金額を計算する関数」に対して、「税抜金額」と「税率」を引数として渡すイメージです。擬似言語では、「関数 税込金額(金額, 税率)」のように、カッコ内に列挙して表現します。
引数を使うことで、同じ手続や関数をさまざまな場面で再利用できます。引数に渡す値を変えるだけで、異なるデータに対して同じ処理を行えるからです。問題文では、どの値がどの順番で渡されているかを確認し、処理の中でどのように使われているかを追いかけることが大切です。
戻り値
戻り値は、関数が計算した結果として呼び出し元に返す値のことです。先ほどの例であれば、「税込金額」が戻り値にあたります。擬似言語では、「戻り値 ← 計算結果」のように書かれたり、「関数 ○○ は △△ を返す」のように記述されたりします。
戻り値は、その後の処理で再び使われることが多く、「別の計算に利用する」「画面に表示する」「条件式に組み込む」など、さまざまな形で活用されます。アルゴリズムを読むときは、「関数が返した値が次にどこへ流れていくのか」を意識すると、処理全体のつながりが見えやすくなります。
5. データ型と値の種類

この章では、扱う値の種類を区別するための考え方として、「データ型」「整数型」「実数型」「論理型」「文字型」について説明します。
データ型
データ型は、「その変数にどのような種類の値が入るのか」を示す分類です。例えば、「年齢」なら整数、「身長」なら小数を含む実数、「会員かどうか」なら真偽値、「氏名」なら文字列といった具合に、扱う情報に応じて適切なデータ型を選びます。データ型によって、利用できる演算や比較の方法も変わります。
データ型を意識しておくと、間違った計算や比較を防ぎやすくなります。例えば、文字列としての「10」と整数の10は、見た目は似ていますが扱い方が異なります。擬似言語の問題でも、「この変数はどんな値を持つ想定なのか」を考えながら読むことで、処理の意図を正しく理解しやすくなります。
整数型
整数型は、小数部分のない数値を表すデータ型です。個数や回数、ID番号など、「切りの良い数」を扱う場面で使われます。例えば、「在庫数」「注文数」「社員番号」などが代表的な例です。整数型どうしであれば、加減乗除や比較などの演算が自然な形で行えます。
繰返し処理で使うカウンタ変数も、多くの場合は整数型です。「1から10まで順番に処理する」といったアルゴリズムでは、整数型の変数を1ずつ増やしながら処理を進めていきます。このように、整数型はアルゴリズムの中で非常に頻繁に登場する基本的なデータ型です。
実数型
実数型は、小数部分を含む数値を扱うためのデータ型です。金額や重さ、距離、時間など、連続的な量を扱う場面で利用されます。例えば、「商品価格が1234.5円」「身長が170.2cm」といった値は実数型で表現するのが自然です。
実数型を扱うときは、丸め誤差に注意が必要です。コンピュータ内部では、すべての小数を完全に正確な形で表現できるわけではないため、計算結果にわずかな誤差が生じることがあります。試験レベルでは細かい実装までは問われませんが、「整数型と実数型では性質が少し違う」というイメージを持っておくと良いでしょう。
論理型
論理型は、「真(true)」または「偽(false)」の二つの値だけを取るデータ型です。条件式の結果など、「条件が成り立つかどうか」を表す場面で使われます。例えば、「在庫ありかどうか」「ログイン中かどうか」といった状態を表現するのに適しています。
論理型の値には、論理演算子「AND」「OR」「NOT」などを適用できます。これにより、「会員かつ在庫あり」「平日または祝前日」のように、複数の条件を組み合わせた表現が可能になります。アルゴリズムを読むときには、「この変数は真偽のどちらを表しているのか」を意識すると、条件分岐の意味が理解しやすくなります。
文字型
文字型は、文字や文字列を扱うためのデータ型です。氏名や住所、商品名など、「数字ではない情報」を表す場面で使われます。1文字を表す場合と、複数文字から成る文字列を表す場合がありますが、いずれも「数値とは違う扱いをする」という点が重要です。
文字型のデータに対しては、「連結する」「部分的に取り出す」「長さを数える」といった操作を行います。一方で、算術演算は通常適用されません。「123」という文字列と、数値の123は意味が違うため、必要に応じて変換する必要があります。データ型の違いを意識しておくことで、こうした混同を防ぐことができます。
まとめ
本記事では、アルゴリズムを表現する方法として、流れ図(フローチャート)と擬似言語があることを確認し、それぞれが処理の流れを「図」と「文章」という異なる形で分かりやすく伝える役割を持つことを整理しました。アルゴリズムを理解するときは、どちらの表現でも「どの順番で何をするのか」を読み取ることが大切です。
続いて、アルゴリズムの中身を構成する要素として、「式」「条件式」「演算子」「代入」「注釈」「入出力」「手続」「関数」「引数」「戻り値」といった用語を一つずつ解説しました。計算や条件の書き方、処理をまとめる考え方、プログラムを読みやすくする工夫などが分かると、フローチャートや擬似言語の問題を見たときに「何をしようとしているのか」を具体的にイメージしやすくなります。特に、条件式の意味とデータの流れ(代入・引数・戻り値)を追えるようになることが重要です。
最後に、データ型として「整数型」「実数型」「論理型」「文字型」などの違いを確認しました。どの変数がどんな型を想定しているのかを意識することで、「どの演算ができるのか」「どのように比較すべきか」が自然と見えてきます。アルゴリズムの表現方法は、一見細かな用語の羅列に見えますが、処理の流れとデータの性質を整理して考えるための基礎となる部分です。用語の意味を一通り押さえたうえで、実際のフローチャートや擬似言語の問題に触れ、読み解く練習を重ねていくことが理解を定着させる近道になります。


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