本記事では、サービスマネジメントの代表的なフレームワークである「ITIL」について解説します。ITILとは何か、正式名称はどれか、といった基本知識に加え、サービスマネジメントとどのような関係があるのか、企業の現場でどのように役立つのかを、イメージしやすい形で整理していきます。
1. ITILとは何かをつかもう

この章では、ITILの概要と、サービスマネジメントとの関係を確認します。ITILは難しい理論というより、「こうすればITサービスを上手に運営できる」という経験則をまとめた手引き書のようなものです。
ITILの基本的な考え方
ITIL(Information Technology Infrastructure Library:情報技術インフラストラクチャライブラリ)は、ITサービスをうまく計画・提供・改善していくための「ベストプラクティス集」です。世界中の企業や組織での成功事例・失敗事例をもとに、「こう設計して、こう運用すると良い」というノウハウを体系的に整理したものと考えると分かりやすいです。
ポイントは、ITILそのものは法律や規格ではなく、「参考にするためのガイドライン」であるということです。企業は、自社の実情に合わせてITILの考え方やプロセスを取り入れ、サービス運営の質を高めていきます。
サービスマネジメントとの関係
サービスマネジメントは、価値あるITサービスを計画し、設計し、移行し、提供し、継続的に改善していくための考え方でした。ITILは、そのサービスマネジメントを実践するための具体的なフレームワーク(枠組み)です。
たとえば、インシデント管理(障害や問い合わせへの対応)、問題管理(根本原因の究明)、変更管理(システム変更の手順管理)など、サービスマネジメントに必要なプロセスが、ITILでは詳細に整理されています。こうしたプロセスを参考にすることで、サービスマネジメントを抜け漏れなく進めやすくなります。
2. ITILフレームワークの特徴

この章では、ITILがどのような特徴を持ったフレームワークなのかを見ていきます。ITILの全てを暗記する必要はありませんが、どんな枠組みなのかを大まかにつかんでおくことが重要です。
ベストプラクティスをまとめた枠組み
ITILの一番の特徴は、現場で実際に役立つ「ベストプラクティス(最良事例)」を整理している点です。机上の理論ではなく、現場での経験をもとに作られているため、トラブル対応や運用改善など、実務の流れをイメージしやすい構成になっています。
また、ITILは特定のメーカーや製品に依存していません。そのため、使っているシステムやツールが違っても、考え方の部分を共通の言語として利用できます。異なる部署や外部ベンダーとも、ITILを共通基盤として話を合わせやすくなります。
サービスライフサイクルを意識した整理
ITILでは、ITサービスを「計画・設計・移行・運用・改善」といったライフサイクルの流れでとらえ、それぞれの段階で必要なプロセスを整理しています。これは前回の記事で扱ったサービスマネジメントの流れと対応しており、両者が密接に結びついていることが分かります。
このライフサイクルの考え方に沿ってプロセスを整備することで、「作る人」と「運用する人」、「企画担当」と「現場担当」といった立場の違うメンバー同士でも、共通の枠組みで議論しやすくなります。
押さえておきたい試験向けポイント
ITパスポート試験では、ITILの細かいプロセスの名前まですべて覚える必要はありません。まずは次の点をしっかり押さえておくと安心です。
1つ目は、「ITILはサービスマネジメントのフレームワークである」という位置づけです。ITサービスをうまく運営するための考え方やプロセスをまとめた枠組みだと理解しておきましょう。
2つ目は、正式名称です。ITILは「Information Technology Infrastructure Library」の略称であることがよく問われます。英語そのものを完璧に書ける必要はありませんが、「ITサービス運用に関するベストプラクティス集をまとめたライブラリ」というイメージを持っておくと、選択肢で迷いにくくなります。
3. ITILを導入するメリット

この章では、組織がITILを取り入れることで、どのようなメリットがあるのかを確認します。メリットを知っておくと、単なる用語としてではなく、現場での活用イメージと結び付けて理解しやすくなります。
業務の標準化と効率化
ITILを参考にプロセスや手順を整えると、IT部門の業務が標準化されます。たとえば、障害が発生したときの連絡ルートや、対応の優先度の付け方、復旧後の報告方法などを、あらかじめ共通ルールとして決めておくことができます。
業務が標準化されていると、人によって対応がまちまちになることを防げます。また、新しく配属されたメンバーも、共通のルールに沿って作業すればよいので、教育もしやすくなります。その結果、ムダな手戻りや伝達ミスが減り、全体として効率が向上します。
品質向上と継続的な改善
ITILでは、単に運用を回すだけでなく、振り返りを行いながら継続的に改善していくことを重視しています。トラブルの発生件数や対応時間、利用者からの不満の内容などを記録し、定期的に見直すことで、サービス品質を少しずつ高めていくことができます。
このような継続的改善の考え方を取り入れると、その場しのぎの対応から脱却し、根本原因の解消や仕組みの見直しにつなげやすくなります。結果として、利用者から見たサービスの信頼性や満足度も向上します。
まとめ
ITILは、ITサービスを計画し、提供し、改善していくためのベストプラクティスをまとめたフレームワークです。サービスマネジメントを実践するうえでの具体的なガイドの役割を果たしており、多くの企業や組織が、自社の実情に合わせて取り入れています。
本記事で見てきたように、ITILは「サービスマネジメントのフレームワークであること」と、「正式名称が Information Technology Infrastructure Library であること」を押さえることが重要です。そのうえで、業務の標準化や品質向上、継続的改善に役立つ枠組みだというイメージを持っておくと、試験問題でも実務でも理解しやすくなります。
ITILは細かなプロセスまで含めるとボリュームが大きいですが、ITパスポート試験の学習では、サービスマネジメントとセットで大まかな位置づけと役割をつかむことが目的です。自分が関わるITサービスの現場で、どのようにITILの考え方が生かされているのかを意識してみると、学んだ内容がより身近なものとして感じられるようになるでしょう。


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