業務の効率化やミス削減を進めるとき、最初にやるべきことは「今の業務の流れを正しく理解すること」です。そこで役立つのが、業務プロセスを図やモデルとして表現する「モデリング」です。本記事では、業務プロセスをどのように見える化し、どのような手法・システムで分析・改善していくのかを整理して解説します。
1. 業務プロセスとモデリングの基本

この章では、業務プロセスとは何か、そしてなぜモデリングが必要なのかという全体像を説明します。まずは「現状を把握するための道具」としてのモデリングの役割を押さえておきましょう。
業務プロセスとは
業務プロセスとは、企業の中で仕事がどのような手順で進んでいくかという「一連の流れ」のことです。例えば、注文を受けてから商品を発送し、代金を回収するまでの一連の手続きが、典型的な業務プロセスの例です。
業務改善や問題解決を行うためには、この業務プロセスを分析して、どこにムダや問題があるのかを明らかにすることが欠かせません。しかし、業務の流れを頭の中だけで把握しようとすると、担当者によって認識がばらばらになったり、重要な手順が抜けていたりすることがあります。
モデリングの役割
そこで利用されるのがモデリングの考え方です。モデリングとは、ビジネスの仕組みや業務プロセスを図や記号、線などを使って「モデル」として表現することを指します。
モデルにすることで、関係者全員が同じ図を見ながら業務の流れを共有できるようになります。その結果、どこで時間がかかっているのか、どの作業が重複しているのかといった問題点を見つけやすくなり、改善案も検討しやすくなります。ITパスポート試験では、このようなモデリングの目的と意義を理解しているかが問われます。
2. 業務プロセスを見える化する代表的なモデル図

この章では、業務プロセスやビジネスの仕組みを視覚的に表す代表的なモデリング手法を紹介します。さまざまな図法がありますが、いずれも「複雑な仕組みを誰にでも分かる形で表現する」という目的は共通しています。
モデル図にはルールや記号の決まりがあり、これを「モデル表記方法」といいます。共通ルールを使うことで、担当者が変わっても同じ図を見て同じ意味を読み取れるようになります。ここでは試験でよく問われる三つの図法を見ていきましょう。
E-R図(Entity Relationship Diagram)
E-R図は、データ同士の関係を表すための図で、「エンティティ(実体)」と「リレーションシップ(関係)」を表現します。例えば、顧客、商品、注文といったエンティティ同士が「顧客は注文をする」「注文は商品を含む」といった関係で結ばれている、という構造を図にします。
データベース設計でよく使われる図であり、どのようなデータを管理すべきか、データ同士がどう関連しているかを整理するのに役立ちます。業務プロセスのモデリングにおいても、「業務の裏側でどのデータが関わっているのか」を理解するために利用されます。
DFD(Data Flow Diagram)
DFDは、データの流れに注目した図です。プロセス(処理)、データストア(保存場所)、外部実体(システムの外にあるもの)、データフロー(矢印)といった要素を使って、「どのデータがどの処理に入力され、どこに保存され、どこへ出ていくのか」を表現します。
業務プロセスの中で情報がどのように受け渡されているかを把握するのに適しており、入力ミスや二重入力など、情報の流れに関する問題点を見つける手がかりになります。
BPMN(Business Process Model and Notation)
BPMNは、業務プロセスそのものを表すための標準的な表記法です。開始イベント、タスク、ゲートウェイ(分岐・合流)、終了イベントなどの記号を使い、業務の流れをフローチャートのように表現します。
BPMNを使うと、「誰がいつどの作業をするのか」「どのタイミングで分岐が発生するのか」「どのシステムと連携しているのか」といった情報を一つの図で示すことができます。複数部門にまたがる業務プロセスを共有・改善する際によく利用される手法です。
3. 業務プロセスを改善するための手法とシステム

この章では、モデリングした業務プロセスをもとに、実際に業務を改善していくための代表的な手法やシステムについて説明します。単に図を描くだけでなく、その結果を使ってどのように改革・管理していくのかがポイントです。
業務プロセスの分析では、「そもそもその業務は必要か」「手順は適切か」「システムで自動化できないか」といった観点から検討します。その際に登場するキーワードがBPR、BPM、ワークフローです。
BPR(Business Process Reengineering)
BPRは、既存の業務プロセスを前提に小さな改善を積み重ねるのではなく、業務の流れを根本から見直し、大幅に再設計する考え方です。
例えば、紙ベースで行っていた申請業務を、承認ルートも含めてゼロから設計し直し、完全に電子化する、といった取り組みがBPRのイメージです。大胆な改革を行うことで、コスト削減やリードタイム短縮などの大きな効果を狙います。
BPM(Business Process Management)
BPMは、業務プロセスを一度改善して終わりにするのではなく、「計画 → 実行 → 評価 → 改善」というサイクルを繰り返しながら継続的に管理・改善していく考え方です。
BPMでは、業務プロセスをモデリングし、それをシステム上に実装して実行状況をモニタリングし、ボトルネックや遅延箇所を分析して、再びプロセスの見直しに反映させます。企業全体として業務プロセスを戦略的に管理する枠組みととらえると理解しやすいです。
ワークフロー
ワークフローは、申請・承認・回覧など、決められた手順で進む業務の流れをシステムで自動化・管理する仕組みです。
例えば、経費精算や休暇申請などの手続きで、申請フォームの入力から上司の承認、経理部門への回付、最終処理までの流れを、ワークフローシステム上で定義・実行します。これにより、紙の回覧による遅延や承認漏れを防ぎ、処理状況をリアルタイムで確認できるようになります。
ワークフローはBPMを実現するための具体的なシステムの一つとして活用されることも多く、「プロセスの自動化」と「標準化」を進める上で重要な役割を果たします。
まとめ
業務改善や問題解決を行うには、まず現状の業務プロセスを正しく理解することが欠かせません。そのために、ビジネスの仕組みを図として「モデリング」し、関係者で共有・分析することが重要になります。
データの構造を表すE-R図、データの流れを表すDFD、業務フローを標準的に表すBPMNといった図を使うことで、複雑な業務も整理して考えることができます。そのうえで、BPRにより抜本的な改革を行ったり、BPMによって継続的に業務プロセスを管理したり、ワークフローシステムで日々の手続きを自動化したりすることができます。
ITパスポート試験では、これらの用語や図の名前だけでなく、「業務プロセスをモデル化し、分析して改善につなげる」という全体の流れをイメージできるようにしておくと、関連する問題に対応しやすくなります。


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