【ITパスポート試験】No.039|技術開発戦略・技術開発計画

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将来も安定して儲け続けるためには、「どんな技術を、いつ、どのように開発するか」を考え抜いた戦略が欠かせません。本記事では、技術動向や製品動向の調査から、ロードマップに沿った技術開発、イノベーション創出、そしてそれを支えるさまざまなフレームワークや用語までを一気に整理します。ITパスポート試験でも頻出のキーワードばかりなので、全体像をつかみながら読み進めてみてください。


目次

1. 技術開発戦略を設計するフレームワーク

この章では、将来の競争力を確保するために、企業がどのように技術開発戦略を立案するのかを扱います。技術動向や製品動向を分析し、自社の技術資産を評価したうえで、ロードマップとして整理していく考え方や、関連する代表的なフレームワークを確認します。

MOT(技術経営)

MOT(Management Of Technology:技術経営)は、技術を「研究の成果」ではなく「経営資源」としてとらえ、経営戦略と結びつけて活用していく考え方です。

どの技術に投資し、どの技術は捨てるのか、また技術をどの事業に活かすのかといった意思決定を、経営レベルで行うことを重視します。単に研究者任せにするのではなく、経営層と技術部門が一体となって、企業価値を高める技術開発戦略を描くことがポイントです。

技術ポートフォリオ

技術ポートフォリオは、自社が保有する複数の技術を、将来性や収益性、競争優位性などの観点から整理し、どこに重点投資するかを判断するための枠組みです。

たとえば「将来性が高く競争優位もある技術」「将来性は不明だが革新的な技術」など、マトリクスに配置して客観的に評価します。これにより、研究開発の予算配分や、外部との技術提携の必要性などを検討しやすくなります。

特許戦略

特許戦略は、特許をどの範囲で取得し、どのように維持・活用するかを計画することです。重要な技術を守るために特許を広く・早く出願するだけでなく、他社の特許を調査して侵害リスクを避けたり、ライセンス収入を得たりする視点も含まれます。

技術開発戦略の一部として特許を位置づけることで、開発すべき技術の優先順位や、公開する技術・秘匿する技術の線引きも明確になります。

技術予測手法

技術予測手法とは、将来どのような技術が実用化され、どの程度普及するかを予測するための方法の総称です。

トレンド分析やシナリオプランニング、デルファイ法などを用いて、技術の成熟時期や市場の立ち上がりを見積もります。これにより、どのタイミングで研究開発を進めるべきか、また新製品投入の時期をどう設定するかといった判断に役立てることができます。

バックキャスティング

バックキャスティングは、「こうなっていてほしい未来」の姿をまず描き、そこから逆算して現在やるべき施策を考える手法です。

技術開発戦略では、たとえば「10年後にカーボンニュートラルを実現した製品群を揃えている」という未来像を設定し、そのために必要な技術を洗い出したうえで、開発ロードマップを作成します。現状の延長線ではなく、理想のゴールから発想するため、革新的な技術テーマが見つかりやすくなります。


2. イノベーションを生み出す開発とビジネスの設計

この章では、技術開発がイノベーションにつながるようにするための考え方や、事業モデルづくりのフレームワークを扱います。製品やプロセスの改善だけでなく、外部との連携やスタートアップ的な進め方、デジタル時代のAPIを活用したビジネスの広がりも押さえます。

プロセスイノベーション

プロセスイノベーションは、製品自体ではなく「作り方」や「提供の仕方」を革新することです。

製造工程の自動化や、物流の最適化、オンラインでのサービス提供などが典型例です。同じ製品でも、より安く、速く、安定して提供できるようになれば、大きな競争力となります。

プロダクトイノベーション

プロダクトイノベーションは、新しい製品やサービスを生み出す、あるいは既存のものを大きく変えることによる革新です。

新機能を備えた家電、新しいビジネスアプリ、これまでにないユーザー体験を提供するサービスなどが該当します。技術開発計画の中心になることが多く、市場ニーズと技術シーズの両方をにらみながら企画されます。

オープンイノベーション

オープンイノベーションは、自社だけに閉じず、大学・研究機関・他企業・スタートアップ・顧客など、外部と連携してイノベーションを起こす考え方です。

自社にない技術やアイデアを取り入れたり、自社技術を他社に提供したりすることで、開発期間を短縮したり、新市場を開拓したりできます。技術提携や共同研究、コンテストの開催などもオープンイノベーションの一形態です。

ハッカソン

ハッカソンは、「ハック(hack)」と「マラソン(marathon)」を組み合わせた言葉で、短期間に集中的にアプリやサービスの試作を行うイベントです。

開発者やデザイナーがチームを組み、数日間でプロトタイプを作り上げます。企業にとっては、社内外から新しいアイデアや人材を発掘する場としても活用され、オープンイノベーションの具体的な取り組みのひとつです。

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスは、事業の構造を「顧客セグメント」「提供価値」「チャネル」「収益の流れ」など9つの要素に分解して、1枚のキャンバスに整理するフレームワークです。

新しい技術を使ったビジネスを検討する際に、誰にどのような価値を届け、どうやってお金を稼ぐのかを俯瞰しやすくしてくれます。技術開発計画だけでなく、事業計画との整合性をとるのに役立ちます。

リーンスタートアップ

リーンスタートアップは、「小さく作って、素早く市場で試し、学びながら改良する」というスタートアップ流の開発手法です。

最初から完璧な製品を目指すのではなく、最小限の機能を持つ試作品(MVP)を早期に出し、顧客の反応から学習していきます。技術開発リスクと市場リスクを同時に減らすアプローチとして、大企業の新規事業でも活用されています。

APIエコノミー

APIエコノミーは、企業やサービスが提供するAPI(Application Programming Interface)を通じて、他の企業や開発者がその機能やデータを利用し、新たなサービスやビジネスを生み出すしくみを指します。

地図情報や決済機能、ログイン機能などをAPIとして公開することで、多数の外部サービスがそれを組み合わせて利用できます。技術開発計画を立てる際には、自社がどの機能をAPIとして提供・利用するのかも重要な検討項目となります。


3. 技術開発のギャップと「越えるべき谷」

この章では、技術開発が順調に進んでいるように見えても、実用化や市場普及の段階でつまずきやすい「ギャップ」についてまとめます。技術開発戦略では、これらの谷をいかにして乗り越えるかをあらかじめ意識しておくことが大切です。

魔の川

魔の川は、基礎研究から応用研究・開発への移行段階に存在するギャップを表す言葉です。

科学的な発見があっても、それがすぐに具体的な技術や製品に結びつくわけではありません。実験条件を現実の環境に合わせて調整したり、コストや安全性をクリアしたりする必要があり、ここで多くの研究が実用化に至らず止まってしまいます。

死の谷

死の谷は、開発された技術を実際の製品や事業として立ち上げる際に直面するギャップです。

技術的には成立していても、量産体制の構築や営業・販売網の整備、顧客の信頼獲得など、多くの課題があります。ここで資金や時間が尽き、技術が埋もれてしまうケースも少なくありません。

ダーウィンの海

ダーウィンの海は、製品化・事業化された後、市場での激しい競争にさらされる段階を指します。

似たような製品が多数出てくるなかで、価格競争に巻き込まれたり、顧客に価値が伝わらなかったりすると、せっかくの技術でも生き残れません。マーケティングやブランド戦略、サービス品質なども含めた総合力が試されるフェーズです。

キャズム

キャズムは、新しい製品や技術が「一部の先進的なユーザー」から「多数の一般ユーザー」に広がる際に存在する大きな溝のことです。

新しもの好きの層には受け入れられても、保守的な一般ユーザーにはなかなか浸透しないことがあります。この溝を越えるには、わかりやすい価値提案やサポート体制の充実、信頼感を高める取り組みなどが重要となります。

イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマは、「現在の主力事業で成功している企業ほど、破壊的な新技術への対応が遅れ、やがて競争力を失ってしまう」という問題を指します。

既存顧客の要望に応えることを優先すると、短期的には利益が上がりますが、新しい技術への投資が後回しになりがちです。その結果、後発の企業に市場を奪われてしまう危険があります。技術開発戦略では、現行事業と将来の技術への投資バランスを取ることが求められます。


4. 顧客理解と価値の検証プロセス

この章では、「誰のどんな課題を解決するための技術なのか」を深く理解し、その価値を段階的に検証する手法を扱います。イノベーションは技術だけでは成立せず、顧客の視点から価値を捉え直すことが不可欠です。

デザイン思考

デザイン思考は、利用者視点で課題を発見し、アイデアを形にして試しながら解決策を磨いていく思考プロセスです。

共感(ユーザー理解)から始まり、課題定義、アイデア発想、プロトタイピング、テストというステップを何度も繰り返します。技術開発を行う際にも、ユーザーの体験や感情に着目してサービス全体を設計することで、単なる高機能な製品にとどまらない価値を生み出せます。

ペルソナ法

ペルソナ法は、典型的なユーザー像を架空の人物として具体的に設定し、その人の視点で製品やサービスを検討する手法です。

年齢、職業、家族構成、価値観、日常の行動パターンなどを詳細に設定することで、「その人なら何を求めるか」「どこで困るか」が想像しやすくなります。技術機能の優先順位付けや、UI・UXの設計に大きく役立ちます。

PoC(Proof of Concept:概念実証)

PoCは、新しい技術やアイデアが「概念として実現可能かどうか」を、小規模な実験で確認することです。

性能や動作の見込みを検証し、「理論上はできそうだ」といった段階から一歩進めて、実際に動くものとして確かめます。この段階では、見た目や完成度よりも、技術的に成り立つかどうかを確認することが主な目的です。

PoV(Proof of Value:価値実証)

PoVは、「技術やサービスが顧客にとって本当に価値があるのか」を検証することです。

PoCで技術的な実現性が確認された後、限定的な環境や少数の顧客で試験導入し、業務改善効果や売上への寄与、ユーザー満足度などを測定します。PoVで十分な価値が確認できれば、本格導入や大規模投資に踏み切る判断材料になります。


5.. 資金調達とパートナーシップによる技術推進

この章では、技術開発を加速するための資金調達と、企業同士の連携の在り方について取り上げます。将来的な市場での競争力を確保するには、外部資金や外部パートナーの力をうまく取り込むことも重要です。

VC(ベンチャーキャピタル)

VC(Venture Capital:ベンチャーキャピタル)は、成長が期待されるベンチャー企業に投資し、その株式上場や企業価値の向上によってリターンを得る投資家・投資会社です。

技術系スタートアップにとって、研究開発や市場開拓の資金源として大きな役割を担います。VCからの投資は、単なる資金だけでなく、経営支援や人脈の提供といった付加価値を伴うことも多くあります。

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)

CVC(Corporate Venture Capital:コーポレートベンチャーキャピタル)は、事業会社が自社の戦略目的のために行うベンチャー投資のことです。

単に投資利益を狙うだけでなく、自社の技術や事業とシナジーのあるスタートアップに出資し、共同開発や販路連携などを通じて、自社の技術開発や新規事業を加速させます。技術開発戦略の一環としてスタートアップと組むことで、外部のイノベーションを取り込むことができます。


まとめ

技術開発戦略・技術開発計画では、まず将来の市場で競争力を確保することを目標に、技術動向や製品動向を調査・分析し、自社の技術を評価することが出発点となります。そのうえで、MOTや技術ポートフォリオ、バックキャスティングなどのフレームワークを活用し、ロードマップとして具体的な計画に落とし込んでいきます。

計画を実行する際には、プロセスイノベーションやプロダクトイノベーション、オープンイノベーションなど、多様な手段でイノベーションを生み出すことが求められます。同時に、魔の川・死の谷・ダーウィンの海・キャズムといったギャップの存在を理解し、それらを乗り越えるための仕組みづくりも欠かせません。

さらに、デザイン思考やペルソナ法で顧客を深く理解し、PoC・PoVで技術の実現性と価値を段階的に検証することで、失敗リスクを抑えつつ有望な技術に集中投資できます。必要に応じて、VCやCVCを通じた外部資金やパートナーシップも取り入れながら、長期的な視点で技術開発を進めていくことが重要です。

これらの考え方や用語を関連づけて理解しておけば、技術開発戦略・技術開発計画の全体像がつかみやすくなり、ITパスポート試験の学習にも大いに役立ちます。

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この記事を書いた人

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の活動を陰ながら応援している、しがないソフトウェアエンジニア。
サトシ ナカモトの戦友。
ITやソフトウェアに関することをわかりやすくまとめ、多くの人にそれらを知ってもらおうと活動しています。
ご質問やご要望、お仕事依頼がございましたらお問合せフォームよりお願いいたします。

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