企業が安定して利益を出し続けるためには、「勘」や「根性」だけでなく、組織全体を計画・実行・評価するための仕組みが必要です。これを支える考え方や仕組みが「経営管理システム」です。顧客との関係管理、サプライチェーンの最適化、品質向上、知識の共有など、さまざまな領域で管理の枠組みが用意されています。ここでは、代表的な用語と考え方を整理し、経営管理システムの全体像がつかめるように解説します。
1. 顧客価値とビジネスの流れを見える化する仕組み

この章では、顧客との関係性や、企業活動全体のつながりを整理する考え方を取り上げます。どこで価値が生まれ、どこで無駄が出ているかを把握することが、経営管理の第一歩です。
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)
CRMは、顧客に関する情報を一元的に管理し、その情報をもとに長期的な関係を築こうとする考え方とシステムのことです。購入履歴や問い合わせ内容、Webサイトの行動履歴などを蓄積し、「この顧客は何に興味があるのか」「どのような提案をすると喜ばれるのか」を把握します。
これにより、顧客ごとに適切な商品提案やアフターサービスを行いやすくなり、顧客満足やリピート率の向上につながります。単に「売ったら終わり」ではなく、「顧客との関係を資産として管理する」のがCRMのポイントです。
バリューチェーンマネジメント
バリューチェーンマネジメントは、企業の活動を「原材料の調達」「製造」「物流」「販売」「サービス」などのプロセスに分解し、それぞれがどのように価値を生み出しているかを分析・管理する考え方です。
各プロセスで付加価値を高めたり、無駄なコストを削減したりすることで、最終的に顧客に提供する価値と利益を最大化しようとします。例えば、開発段階で顧客ニーズを十分に反映できていないと、後工程で手戻りが増えるなど、チェーン全体に影響が出ます。
バリューチェーンとして全体を眺めることで、「どこを改善すると最も効果が大きいか」を見極めやすくなる点が特徴です。
2. 知識と情報を共有して強い組織をつくる仕組み

この章では、組織内に眠っている知識や情報を共有し、活用するための考え方を紹介します。個人の経験を組織全体の力に変えることが、経営管理システムの大きなテーマの一つです。
SECIモデル(共同化・表出化・連結化・内面化)
SECIモデルは、組織の知識がどのように生まれ、共有され、深まっていくかを説明したフレームワークです。
- Socialization(共同化):対話やOJTを通じて、暗黙知が人から人へ共有される
- Externalization(表出化):暗黙知を言葉や図、マニュアルなどにして形式知として表現する
- Combination(連結化):複数の形式知を組み合わせて、新たな知識体系をつくる
- Internalization(内面化):形式知を自ら実践し、自分の暗黙知として身につける
この4つのプロセスが循環することで、組織全体の知識レベルが高まっていく、というのがSECIモデルの考え方です。会議や報告書づくり、マニュアル整備なども、このサイクルの一部だと捉えられます。
ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントは、社員一人ひとりが持つ経験やノウハウ、失敗事例などを、組織全体の「知」として共有・活用する取り組みです。SECIモデルが示す知識創造のプロセスを、実際の組織運営の中で行っていくためのマネジメントだと考えると分かりやすいです。
具体的には、社内SNSやナレッジ共有サイト、勉強会、事例報告会などを通じて、知識が属人化しないようにします。ナレッジマネジメントが機能すると、同じ失敗を繰り返すことが減り、成功事例を素早く横展開できるようになります。
ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)パッケージ
ERPパッケージは、販売・生産・在庫・会計・人事など、企業の主要業務を統合的に管理する基幹業務システムです。部門ごとにバラバラだった情報を一つのデータベースで管理し、「会社のどこで何が起きているか」をリアルタイムに把握しやすくします。
例えば、営業が受注を入力すると、生産計画や在庫、原価、売掛金といった情報が自動的に連動するように設計されており、二重入力や情報の食い違いを減らせます。ERPは、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を効率よく配分するための土台となるシステムといえます。
3. 供給連鎖と制約に着目した全体最適化

この章では、企業の外に広がるサプライチェーン全体をどう管理するか、そして「一番のネック」を見つけて改善するという考え方を紹介します。部分最適ではなく全体最適を目指すのがポイントです。
SCM(Supply Chain Management:供給連鎖管理)
SCMは、原材料調達、製造、在庫、物流、販売までを一つの「供給連鎖」としてとらえ、全体の流れを最適化しようとする管理の考え方です。
需要予測にもとづいて生産量や在庫量を調整したり、複数の企業間で情報を共有したりすることで、「在庫切れ」と「在庫過多」の両方を避けながら、コストとサービスレベルのバランスを取ります。
SCMがうまく機能すると、在庫が過剰に積み上がることなく、必要なときに必要な量を届けられるようになり、顧客満足とコスト削減を同時に実現しやすくなります。
TOC(Theory Of Constraints:制約理論)
TOCは、「システム全体のパフォーマンスは、最も弱い部分(制約)によって決まる」という考え方にもとづく改善手法です。生産ラインであれば、一番処理能力の低い工程がボトルネックとなり、いくら他の工程を速くしても全体の生産量は増えません。
TOCでは、まず制約となっている工程や資源を特定し、その能力を最大限に活かすように他の工程や在庫の持ち方を調整します。そのうえで、必要に応じて制約部分に投資し、全体の能力を高めていきます。
SCMがサプライチェーン全体の最適化を目指すマクロな考え方だとすれば、TOCはその中で「どこから手をつけるか」を教えてくれる改善のアプローチだといえます。
4. 品質とプロセスを継続的に改善するマネジメント

この章では、品質を軸にした経営管理の考え方であるTQC・TQMと、統計的手法を使ったシックスシグマを取り上げます。いずれも、プロセス改善を継続的に行うための枠組みです。
TQC(Total Quality Control:全社的品質管理)
TQCは、品質管理を製造現場だけの活動にとどめず、設計・販売・管理部門なども含めた全社活動として行う考え方です。品質は工程の最終検査だけで作り込むのではなく、設計段階でのミス防止、部品調達、作業手順、教育など、あらゆる要素の積み重ねで決まります。
TQCでは、品質向上のための小集団活動(QCサークル)や、統計的手法を用いたデータ分析などを活用し、現場主導で改善を進めていきます。
TQM(Total Quality Management:総合的品質管理)
TQMは、TQCの考え方をさらに発展させ、「品質」を経営全体の中心に据えたマネジメントの枠組みです。顧客満足を高めることを最終目的とし、そのためにトップマネジメントのリーダーシップや、全社員の参画、仕組みとしての改善プロセスを重視します。
品質を「製品の出来栄え」だけでなく、「サービス」「対応」「プロセスの安定性」なども含めて広く捉え、企業文化として品質志向を根付かせていく点が特徴です。
シックスシグマ
シックスシグマは、統計的な手法を用いて不良やばらつきを徹底的に減らし、プロセスの品質を高いレベルで安定させる改善手法です。「シグマ」はばらつきの大きさを表す統計用語で、シックスシグマは理論上「ほとんど不良が出ないレベル」を意味します。
シックスシグマでは、DMAIC(Define:定義、Measure:測定、Analyze:分析、Improve:改善、Control:管理)という手順で改善プロジェクトを進めます。感覚ではなくデータにもとづいて原因を特定し、再発防止の仕組みまで作り込むことが求められます。
TQMやTQCが品質向上の考え方・枠組みだとすれば、シックスシグマはその中で使われる具体的な改善手法の一つと捉えることができます。
まとめ
この記事では、「経営管理システム」に関連する代表的な用語と考え方を整理しました。
CRMやバリューチェーンマネジメントは、顧客との関係や価値の流れを見える化し、どこで価値を高めるかを考えるための枠組みでした。SECIモデルやナレッジマネジメント、ERPパッケージは、組織内の知識・情報・資源を共有し、全社で活用するための仕組みとして重要です。
SCMとTOCは、サプライチェーン全体とボトルネックに着目し、部分最適ではなく全体最適を目指す考え方でした。TQC・TQM・シックスシグマは、品質とプロセスの継続的な改善を通じて、顧客満足と競争力を高めていくためのマネジメント手法です。
これらはそれぞれ独立したキーワードに見えますが、実際の企業経営では相互に組み合わせて使われます。顧客価値を起点に、情報とプロセスを見える化し、ボトルネックを改善し続ける——そのための考え方と仕組みの総称が「経営管理システム」である、とイメージしておくと理解しやすくなります。


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