ビジネス戦略を立てて実行していくには、「勘と経験」だけでなく、情報にもとづく分析と、わかりやすい目標設定が欠かせません。この記事では、CSF・KGI・KPI・BSCといった指標の考え方や、バリューエンジニアリング、SMART・GROWモデル・KPIツリーなどの目標設定フレームワークを整理し、業務分析から目標管理までを一連の流れとして解説します。
1. 情報にもとづくビジネス戦略づくり

この章では、「情報に基づく基本的な推論」と「情報分析手法を使った業務分析」について、全体像を押さえます。どの指標やフレームワークも、この考え方の延長線上にあります。
情報に基づく基本的な推論
ビジネス戦略を考えるときは、売上や利益だけでなく、顧客属性・販売チャネル別の成績・業務の処理件数・ミスの発生状況など、さまざまな情報を組み合わせて考えていきます。
例えば、売上が下がったという事実があっても、その原因は「来店客数が減った」「客単価が下がった」「ある商品だけが不調」など、複数考えられます。そこで、データを切り分けて比較し、「どこで何が起きているか」を推論していきます。
このように、情報を集めて仮説を立て、さらに別の情報で検証しながら絞り込んでいくプロセスが、ビジネス戦略立案のベースになります。
基本的な情報分析手法を使った業務分析
業務分析では、処理件数、処理時間、エラー件数、担当者ごとの負荷などを把握し、「どこにムダやボトルネックがあるか」を明らかにします。
例えば、同じ仕事でも担当者によって処理時間が大きく異なる場合、作業手順に違いがあるのか、スキル差があるのか、といった視点で原因を探ります。ここで使われるのが、前の記事で触れたような各種経営情報分析手法です。
この業務分析の結果が、のちほど説明するCSFやKPIの設定に生かされていきます。つまり、「現状を数字で把握し、問題点と強みを見える化する」ことが、戦略と目標設定の出発点になります。
2. 指標で戦略を管理する考え方

この章では、戦略を数値で管理するための基本用語であるCSF・KGI・KPIと、それらをつなぐKPIツリーを解説します。言葉は似ていますが、役割が少しずつ違う点がポイントです。
CSF(Critical Success Factors:重要成功要因)
CSFは、そのビジネスで成功するために「特に重要な要因は何か」を整理したものです。たとえば、ネット通販であれば「商品ラインナップの豊富さ」「配送スピード」「サイトの使いやすさ」などがCSFとして挙げられます。
CSFは直接数字ではありませんが、「この要因を押さえれば成功に近づける」という“戦略上のツボ”を示します。後でKPIを決めるときも、「このCSFを実現できているかどうか」を測る指標を考えることになります。
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)
KGIは、最終的なゴールが達成できたかどうかを示す指標です。売上高、営業利益、シェア、会員数などが代表例です。「この数字を達成できれば、戦略目標はひとまず成功といえる」というゴールラインだと考えるとわかりやすいです。
KGIは通常、会社や事業全体の大きな目標として設定されます。KGIだけを追いかけると具体的な行動に落とし込みづらいため、後述するKPIでブレイクダウンしていくことが多いです。
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)
KPIは、KGIを達成するための「途中経過」を管理するための指標です。KGIが「年商○億円」だとすると、KPIは「月間の新規顧客数」「リピート率」「一人当たり購入単価」などになります。
KPIを設定することで、「どの数字が改善すればKGIに近づくのか」が明確になり、現場の行動と目標がつながります。KPIはCSFとも結びついており、「CSFを実現するために何を測るか」という視点で作られていきます。
KPIツリー
KPIツリーは、KGIから逆算してKPIを階層的に分解し、木の枝のように整理した図です。最上位にKGIを置き、「売上=客数×客単価」のように数式で分解しながら、下の階層ほど現場に近い指標へと細かくしていきます。
これにより、「この部署がこの数字を改善すれば、最終的にKGIのどこに効いてくるのか」が一目でわかるようになります。組織全体で目標を共有し、部門ごとの役割を明確にするうえで非常に役立つフレームワークです。
3. バランススコアカードで全体像を可視化する

この章では、KPIを「どこから見ている指標なのか」で整理する枠組みであるBSC(バランススコアカード)を紹介します。
BSC(Balanced Scorecard:バランススコアカード)
BSCは、企業の活動を
- 財務の視点
- 顧客の視点
- 業務プロセスの視点
- 学習と成長(人材・組織)の視点
といった複数の視点からバランスよく評価しようという考え方です。
従来は、売上や利益などの「財務指標」だけで会社の成績を判断しがちでした。しかし、顧客満足度や業務プロセスの効率、人材育成の状況などを無視してしまうと、短期的な数字はよくても長期的な成長が難しくなります。
BSCでは、それぞれの視点ごとにCSFやKPIを整理し、「どの視点の指標がどう連動しているのか」をマップとして描きます。こうすることで、組織全体としてバランスの取れた戦略・目標管理がしやすくなります。
4. 価値とコストを同時に見直すバリューエンジニアリング

この章では、製品やサービスの「価値」と「コスト」をセットで見直す考え方であるバリューエンジニアリングを解説します。
バリューエンジニアリング
バリューエンジニアリング(VE)は、製品やサービスが果たすべき「機能」に注目し、その機能を維持・向上させながら、できるだけ低いコストで提供するにはどうすれば良いかを体系的に検討する手法です。
ここでいう「価値」は、一般的に「価値=機能÷コスト」と考えます。つまり、同じコストなら機能を高めれば価値が上がり、同じ機能ならコストを下げれば価値が上がります。
VEでは、不要な機能や過剰品質がないかを見直し、代替素材の検討や設計の簡素化、製造プロセスの改善などを通じて、価値向上を図ります。単なるコスト削減ではなく、「顧客にとって本当に必要な機能とは何か」を考える点が特徴です。
5. 目標設定フレームワークで実行力を高める

この章では、具体的な目標を設定するときに役立つフレームワークであるSMART、GROWモデルについて紹介します。先ほどのKGI・KPIやKPIツリーと組み合わせて使われることが多い考え方です。
SMART
SMARTは、良い目標の条件を表す頭文字です。一般的には次のように説明されます。
- Specific:具体的である
- Measurable:測定可能である
- Achievable:達成可能である
- Relevant:上位目標に関連している
- Time-bound:期限が明確である
たとえば、「売上を頑張って増やす」ではなく、「今期末までに、主要商品の売上を前期比10%増やす」のように、誰が見ても同じイメージを持てる形にすることがSMARTの考え方です。
SMARTを意識することで、あいまいなスローガンではなく、行動につながる目標を設定しやすくなります。
GROWモデル
GROWモデルは、主にコーチングや面談で目標達成を支援するときに使われるフレームワークで、次の4つのステップから成り立ちます。
- Goal:目標を明確にする
- Reality:現状を把握する
- Options:選択肢・手段を洗い出す
- Will(またはWay Forward):具体的な行動と意思を決める
例えば、営業担当者との面談で、「今期の目標(Goal)は何か」「現在の数字や課題(Reality)はどうか」「そのギャップを埋める方法(Options)は何があるか」「その中から何をいつまでにやるか(Will)」という流れで対話します。
GROWモデルを使うと、本人が自分で目標と行動を考え、コミットしやすくなります。KPIやSMARTで定めた目標を、現場レベルの行動に落とし込むのに役立つ枠組みです。
まとめ
この記事では、ビジネス戦略の立案と評価のための情報分析手法・目標設定手法として、CSF・KGI・KPI・BSC・バリューエンジニアリング、そしてSMART・GROWモデル・KPIツリーを取り上げました。
情報にもとづいて業務分析を行い、CSFで成功要因を整理し、KGIとKPIで目標と途中経過を数値化します。KPIツリーやBSCを使えば、組織全体のつながりやバランスを保ちながら管理できます。バリューエンジニアリングは、価値とコストの両面から製品・サービスを見直す手法として重要です。
さらに、SMARTやGROWモデルといった目標設定フレームワークを組み合わせることで、現場の具体的な行動計画へと落とし込むことができます。
これらの手法を単なる用語として覚えるのではなく、「情報をどう整理し、どの指標で追いかけ、どのような目標として伝えるか」という一連の流れとして捉えることで、ビジネス戦略の立案と評価がぐっと実践的なものになります。


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