マーケティングには、商品やサービスを売るための「型」のような手法がいくつもあります。どの手法も、誰に・どのように情報を届け、どう行動してもらうかを工夫したものです。この記事では、代表的なマーケティング手法として挙げられる、セグメントマーケティング、ダイレクトマーケティング、クロスメディアマーケティング、インバウンドマーケティング、ロケーションベースマーケティング、プッシュ戦略、プル戦略の特徴を分かりやすく整理して解説します。
1. 顧客を絞り込んでアプローチする手法

この章では、「誰に売るのか」をはっきりさせ、その人たちに直接届けていく手法を取り上げます。やみくもに大勢へ宣伝するのではなく、狙うべき顧客を絞り込むことで、効率よく成果を上げる考え方です。
セグメントマーケティング
セグメントマーケティングとは、市場全体を年齢・性別・地域・趣味・価値観などの切り口でいくつかのグループ(セグメント)に分け、それぞれに合った商品や宣伝方法を考える手法です。
例えば、同じ飲料でも、「健康志向の社会人」「部活をする高校生」「小さな子どもを持つ親」では、求める味やパッケージ、宣伝メッセージが大きく異なります。市場をセグメントに分けることで、誰に向けた商品なのかを明確にし、その人たちのニーズに合わせたマーケティングができるようになります。
セグメントマーケティングは、限られた予算で最大の効果を出すうえで、ほとんどすべてのマーケティング活動の前提となる考え方です。
ダイレクトマーケティング
ダイレクトマーケティングは、特定の顧客に対して、企業が直接コミュニケーションを行う手法です。代表的なものには、ダイレクトメール、メールマガジン、電話、SNSのメッセージ配信などがあります。
「誰にどの情報を送るか」を顧客データにもとづいて設計できるため、興味がありそうな人にだけピンポイントでアプローチできるのが特徴です。また、反応率や購入率を数字で測定しやすく、施策の改善にもつなげやすいというメリットがあります。
一方で、しつこすぎる配信は嫌われてしまうため、頻度や内容のバランスを取ることが重要です。
2. デジタル時代のメディア活用型マーケティング

この章では、複数のメディアやデジタル技術を組み合わせて、顧客との接点を増やしていく手法を紹介します。インターネットやスマートフォンの普及により、顧客の行動は複雑になっており、それに合わせたマーケティングが求められています。
クロスメディアマーケティング
クロスメディアマーケティングは、テレビ、雑誌、Webサイト、SNS、店頭広告など、複数のメディアを組み合わせて一体的にプロモーションを行う手法です。
例えば、テレビCMで商品を知ってもらい、詳しい情報はWebサイトへ誘導し、SNSではキャンペーン情報を発信する、といった連携が考えられます。メディアごとにバラバラのメッセージを出すのではなく、共通のコンセプトやデザインで「同じブランドの情報だ」と認識してもらうことがポイントです。
これにより、顧客はさまざまなメディアを通じて繰り返し接触するため、商品を覚えてもらいやすくなります。
インバウンドマーケティング
インバウンドマーケティングは、広告で一方的に売り込むのではなく、「顧客のほうから見つけてもらう」ことを目指す手法です。代表例として、役に立つ記事を発信するコンテンツマーケティングや、検索エンジン対策(SEO)、SNSでの情報発信などがあります。
顧客は、困りごとや知りたい情報を自分で検索し、その過程で企業のコンテンツにたどり着きます。そこで信頼感や専門性を感じてもらえれば、「この会社から買いたい」と自然に思ってもらえるようになります。
売り込み感が少なく、長期的なファンづくりに向いている一方で、効果が出るまでに時間がかかることが多い点も特徴です。
ロケーションベースマーケティング
ロケーションベースマーケティングは、スマートフォンの位置情報などを活用して、「今、その場所にいる顧客」に合わせた情報を届ける手法です。
例えば、店舗の近くを通った人にだけクーポンを配信したり、観光地にいるユーザーにその地域限定の商品情報を表示したりすることができます。場所と連動させることで、来店や即時購入につながりやすくなるのがメリットです。
ただし、位置情報はプライバシーに関わるため、利用目的の明示や同意の取得など、適切な取り扱いが求められます。
3. 売り方のスタイル

この章では、販売チャネル全体の戦略としてよく使われる「プッシュ戦略」と「プル戦略」を解説します。どちらも、商品を市場に浸透させるための考え方ですが、主な狙いどころが異なります。
プッシュ戦略
プッシュ戦略は、メーカーが流通業者や小売店などの販売チャネルに対して積極的に働きかけ、商品を「押し出していく」戦略です。具体的には、小売店向けの販売インセンティブ、仕入れ条件の優遇、販売員への説明会などが含まれます。
この戦略では、まず店頭に商品を置いてもらうこと、販売担当者に積極的に勧めてもらうことが重要になります。特に、消費者があまり商品を指定せずに店頭で選ぶようなカテゴリーでは、プッシュ戦略が効果を発揮しやすくなります。
一方で、流通側への働きかけにコストがかかりやすいため、費用対効果を意識した運用が必要です。
プル戦略
プル戦略は、広告やプロモーションを通じて消費者の需要を高め、「お客様に商品を指名してもらう」ことで、結果的に流通業者が商品を仕入れざるを得ない状況を作る戦略です。
テレビCMやSNSなどで話題になり、消費者から「この商品が欲しい」と声が上がれば、小売店はその需要に応えるために仕入れを増やします。つまり、消費者側から商品を「引っ張ってもらう(プル)」イメージです。
新ブランドを立ち上げる際や、一般消費者向けの商品で認知度を高めたいときには、プル戦略が効果的に働きます。ただし、広告費が大きくなりがちなので、プッシュ戦略とのバランスを取ることが大切です。
まとめ
この記事では、代表的なマーケティング手法として、セグメントマーケティング、ダイレクトマーケティング、クロスメディアマーケティング、インバウンドマーケティング、ロケーションベースマーケティング、プッシュ戦略、プル戦略を整理して紹介しました。
セグメントマーケティングやダイレクトマーケティングは、「誰に届けるか」を絞り込んで効率的にアプローチするための手法でした。クロスメディアマーケティング、インバウンドマーケティング、ロケーションベースマーケティングは、複数メディアやデジタル技術を組み合わせて顧客との接点を増やす、現代的な手法です。
プッシュ戦略とプル戦略は、流通や広告を通じて「押して売るか」「引きつけて売るか」という視点から、販売の全体設計を考えるための枠組みでした。
実際のマーケティングでは、これらの手法を単独で使うのではなく、目的やターゲットに合わせて組み合わせて活用していきます。それぞれの特徴を理解しておけば、「この商品・この市場にはどの手法が向いているか」を考えやすくなり、より効果的なマーケティング戦略につなげることができます。

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