【ITパスポート試験】No.032|経営戦略に関する用語

※本サイトで紹介している商品・サービス等の外部リンクには、プロモーションが含まれています。

企業が成長し続けるためには、「どの市場で、どのように戦うか」「他社とどう協力するか」「お金や人材をどう配分するか」といった戦略的な判断が欠かせません。こうした判断を考えるときに使われるのが、競争優位やニッチ戦略、M&A、ESG投資など、さまざまな経営戦略の用語です。この記事では、これらの代表的な用語をテーマごとに整理し、イメージしやすいように解説します。


目次

1. 競争優位と市場でのポジション取り

この章では、「競合他社と比べてどう優位に立つか」「どんな市場を選ぶか」という、戦略の出発点となる考え方をまとめます。商品やサービスが似通ってくる中で、どのように差別化するかを理解することが狙いです。

競争優位

競争優位とは、他社と比べて有利な立場に立てる要因のことです。たとえば、コストが安い、生産技術が高い、ブランド力がある、販売網が広いなどが競争優位の例です。競争優位は一時的なものに終わることも多いため、企業は優位性を維持・強化する工夫を続ける必要があります。

ニッチ戦略

ニッチ戦略は、大企業があまり注目していない「すき間市場」に特化して戦う戦略です。市場全体は小さくても、特定の顧客層のニーズにぴったり合う製品やサービスを提供することで、高い収益を得ることを目指します。中小企業が大企業と正面から争うのではなく、得意分野に集中する考え方とも言えます。

同質化戦略

同質化戦略は、あえて競合と似たような商品ラインナップや価格帯を取り、標準的な選択肢として顧客に選ばれることを狙う戦略です。極端な差別化はせず、「どこを選んでも大きな差はないが、安心感がある」といったポジションを確保するケースもあります。ただし、他社との違いが薄くなると価格競争に陥りやすいという課題があります。

ブルーオーシャン戦略

ブルーオーシャン戦略は、既存の激しい競争市場(レッドオーシャン)から離れ、競合がほとんどいない新しい市場を創り出すことを目指す戦略です。従来の業界の常識にとらわれず、顧客にとって本当に価値のある要素を組み合わせることで、新しい価値提案を行います。成功すると、しばらくの間は競争の少ない環境で高い収益を上げることができます。

コモディティ化

コモディティ化とは、製品やサービスの差別化要素が薄れ、どの会社のものを選んでもほとんど変わらない状態になることです。この状態になると、顧客は主に価格で選ぶようになり、企業は価格競争に巻き込まれやすくなります。家電や通信サービスなど、成熟した市場で起こりやすい現象です。

カニバリゼーション

カニバリゼーションとは、新しい製品や店舗が、自社の既存製品・店舗の売上を食い合ってしまうことです。自社の中でお客様を奪い合ってしまうイメージです。ただし、競合他社にシェアを取られるよりは、自社内でカニバリゼーションを起こしてでも、新たな成長分野を育てる方が望ましい場合もあります。戦略的にコントロールできているかどうかがポイントになります。


2. 組織能力とイノベーションの源泉

この章では、企業が長期的に成長するための「中身の強さ」に関する用語をまとめます。単発のヒット商品だけでなく、継続して成果を出すためにどのような能力が必要かという視点です。

イノベーション

イノベーションは、新しい製品やサービス、ビジネスモデルなどを生み出し、社会や市場に変化をもたらすことです。単なる技術の発明だけでなく、それを実際の価値として提供し、広く使われるようにすることまで含まれます。イノベーションを継続的に起こせる企業は、競争優位を保ちやすくなります。

コアコンピタンス

コアコンピタンスとは、企業が持つ独自の強みであり、他社には真似しにくい中核的な能力のことです。特定の技術力、独自のノウハウ、強力なブランドと顧客基盤などが該当します。コアコンピタンスは、複数の事業にまたがって活用できることが多く、企業の成長エンジンとなります。

規模の経済

規模の経済とは、生産量や事業規模が大きくなるほど、単位あたりのコストが下がる効果のことです。大量生産による設備の効率活用や、仕入れの一括交渉によるコスト削減などが代表例です。規模の経済を活かせる企業は、コスト面での競争優位を築きやすくなります。

経験曲線

経験曲線は、生産や業務の経験を積めば積むほど、効率が上がりコストが下がっていくという考え方を表した曲線です。同じ製品を作り続けるうちに、作業のコツや改善点が蓄積され、コスト削減や品質向上につながります。早くから市場に参入し、多くの経験を積んだ企業ほど有利になると考えられます。


3. 企業間連携とビジネスモデル

この章では、他社との関係づくりや事業構造の組み方に関する用語を取り上げます。自社だけで完結させるのではなく、外部の企業やパートナーと連携しながら価値を生み出す考え方です。

エコシステム

エコシステムは、複数の企業や組織が連携しながら、一つのビジネスの「生態系」を形成している状態を指します。プラットフォーム企業と、その上でサービスやアプリを提供する企業群の関係などが典型的です。参加者同士が相互に価値を高め合う仕組みを作れるかどうかが重要になります。

アライアンス

アライアンスは、企業同士が提携して協力関係を結ぶことです。共同開発や共同販売、技術連携など、さまざまな形があります。アライアンスを活用することで、自社だけでは持たない技術や販売網を補い、スピーディーに事業を展開することができます。

アウトソーシング

アウトソーシングは、自社の業務の一部を外部の専門企業に委託することです。システム運用、人事・経理業務、物流など、ノンコア業務を中心に活用されます。コスト削減や専門性の活用といったメリットがある一方で、委託先の管理や情報セキュリティへの配慮も重要になります。

M&A(Mergers and Acquisitions)

M&Aは、企業の合併や買収を通じて、他社の事業や資源を取り込むことです。新規事業への参入スピードを上げたり、技術・人材・ブランドをまとめて獲得したりする手段として利用されます。成功すれば大きな効果がありますが、企業文化の違いや統合作業の難しさから、慎重な判断と計画が必要になります。

OEM(Original Equipment Manufacturer:相手先ブランド製造)

OEMは、自社で製品を製造しながら、他社ブランドとして販売してもらう形態です。製造側は生産能力を活かして大量に作ることができ、販売側はブランド力や販売網を活かして市場に届けます。両者が役割分担することで、効率的なビジネスモデルを構築できます。

ファブレス

ファブレスは、自社では工場を持たず、設計やマーケティングなど上流工程に特化し、製造は外部の工場に委託するビジネスモデルです。半導体メーカーなどでよく見られます。設備投資を抑えつつ、設計やブランドに集中できる一方で、供給能力を外部に依存するリスクもあります。

フランチャイズチェーン

フランチャイズチェーンは、本部となる企業が、加盟店に対してブランド名やノウハウ、仕入れルートなどを提供し、加盟店はその対価として加盟金やロイヤルティを支払う仕組みです。コンビニエンスストアや飲食チェーンなどで広く利用されています。本部はスピーディーに店舗網を拡大でき、加盟店は実績のあるビジネスモデルを利用できる点が特徴です。

垂直統合

垂直統合は、原材料の調達から製造、販売に至るまで、サプライチェーンの上流から下流までを一つの企業グループ内で統合することです。品質や納期をコントロールしやすくなる一方で、設備投資や固定費が大きくなる傾向があります。どこまでを自社で担い、どこからを外部委託するかは、戦略上の重要な判断ポイントです。

ロジスティクス

ロジスティクスは、原材料の調達から製品の配送までを含む物流全体を、戦略的に管理・最適化する考え方です。倉庫配置の見直しや在庫の適正化、配送ルートの効率化などを通じて、コスト削減と顧客サービスの向上を両立させることを目指します。

ベンチマーキング

ベンチマーキングは、自社の製品や業務プロセスを、他社や業界の優れた事例と比較し、改善のヒントを得る手法です。単に真似をするのではなく、「なぜその企業は優れているのか」を分析し、自社に合った形で取り入れていくことが重要です。


4. 企業統治と投資に関する戦略

この章では、企業の所有や支配、そしてお金の流れに関する用語を整理します。株式市場との関係や、社会的な視点を踏まえた投資の考え方など、経営とファイナンスが絡む領域です。

MBO(Management Buyout:経営陣による自社買収)

MBOは、現在の経営陣が資金を集めて自社の株式を買い取り、会社の所有権を獲得することです。上場をやめて非公開化し、長期的な視点で経営改革を進めたい場合などに使われます。経営陣と株主の利害を一致させやすい一方で、公平な価格で買い取られているかどうかが重要な論点になります。

TOB(Take Over Bid:公開買付け)

TOBは、ある企業の株式を取得する際に、あらかじめ価格や期間を公表して、不特定多数の株主から株を買い集める方法です。友好的なM&Aの一手段として使われることもあれば、経営陣の意向に反して買収を仕掛ける敵対的TOBとして行われることもあります。いずれの場合も、株主にとっては売却の是非を判断する重要な局面になります。

ESG投資

ESG投資は、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の観点を重視して企業を評価し、投資先を選ぶ考え方です。単に短期的な利益だけでなく、環境保護への取り組みや人権・労働環境、経営の透明性などを総合的に見て、長期的な成長が期待できる企業に投資します。企業側にとっては、ESGの取り組みを強化することが、投資家からの信頼獲得にもつながります。


まとめ

この記事では、経営戦略に関する代表的な用語を、競争優位・組織能力・企業間連携・企業統治と投資といったテーマごとに整理して解説しました。

競争優位やニッチ戦略、ブルーオーシャン戦略、コモディティ化、カニバリゼーションといった用語は、「どこで、どう戦うか」という市場戦略を考えるうえで重要なキーワードです。イノベーションやコアコンピタンス、規模の経済、経験曲線は、企業の内部にある強みをどう育てるかという視点を与えてくれます。

エコシステム、アライアンス、アウトソーシング、M&A、OEM、ファブレス、フランチャイズチェーン、垂直統合、ロジスティクス、ベンチマーキングは、他社との連携やビジネスモデルの組み立て方に関わる用語です。MBOやTOB、ESG投資は、企業の所有構造や投資の観点から、経営をどのようにコントロールしていくかを示しています。

これらの用語は、一つひとつが独立しているように見えて、実際には相互に関連しています。市場環境と自社の強みを踏まえ、どの手段を組み合わせればよいかを考えることが、戦略立案の核心です。用語の意味を押さえるだけでなく、「どの場面で使われる考え方なのか」をイメージしながら理解を深めていくと、経営戦略の全体像が見えやすくなります。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の活動を陰ながら応援している、しがないソフトウェアエンジニア。
サトシ ナカモトの戦友。
ITやソフトウェアに関することをわかりやすくまとめ、多くの人にそれらを知ってもらおうと活動しています。
ご質問やご要望、お仕事依頼がございましたらお問合せフォームよりお願いいたします。

コメント

コメントする

CAPTCHA



reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

目次