【ITパスポート試験】No.031|経営情報分析手法

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企業が将来どのようにビジネスを展開していくかを考えるとき、「なんとなくの勘」ではなく、データや情報にもとづいて戦略を立てることが重要になります。そのために使われるのが、SWOT分析や3C分析、PPM、VRIO分析といった経営情報分析手法です。これらのフレームワークを使うことで、自社を取り巻く外部環境・内部環境を整理し、販売・市場・製品のどこに力を入れるべきかを見極めやすくなります。ここでは、代表的な分析手法と、実際の活用イメージをわかりやすく解説します。


目次

1. 経営戦略と外部・内部環境の整理

この章では、分析手法を使う前提として、まず「外部環境」と「内部環境」という考え方を整理します。どちらも経営戦略を考えるうえで欠かせない視点であり、多くのフレームワークの出発点となっています。

外部環境

外部環境とは、企業の力だけではコントロールできない、会社の外側の要因を指します。具体的には、景気や為替などのマクロな経済動向、業界の成長性、競合他社の動き、法規制、技術トレンド、顧客のニーズやライフスタイルの変化などが含まれます。

外部環境を分析する目的は、「自社にとって追い風になる要因」と「逆風になる要因」を早めに把握し、戦略に反映させることです。たとえば、新しい技術が登場して市場が一気に広がりそうであれば、それはチャンスとして投資を検討するべきですし、規制強化でコストが増えそうな場合は、ビジネスモデルの見直しが必要になるかもしれません。

このように、外部環境の変化を定期的にウォッチし、経営判断に取り入れていくことが、長期的な企業成長には欠かせません。

内部環境

内部環境とは、企業が自らコントロールできる会社の内側の要因を指します。人材のスキルや組織文化、保有している技術、資金力、ブランド力、生産設備、情報システムなどが代表的な要素です。

内部環境を分析する目的は、「自社の強み」と「弱み」を客観的に把握することです。たとえば、優れた開発力を持つ一方で販売チャネルが弱い、といった状況であれば、どのように強みを活かしつつ弱みを補うかを考えていく必要があります。

外部環境がどれほど良くても、内部環境が整っていなければチャンスを活かせませんし、逆に厳しい外部環境でも、内部環境の強みを活かせば活路を見出せる場合もあります。そのため、外部環境と内部環境はセットで整理することが大切です。


2. フレームワークで学ぶ代表的な分析手法

この章では、外部環境・内部環境を整理し、経営戦略の方向性を考えるための代表的なフレームワークを紹介します。枠に当てはめて考えることで、抜けや漏れを防ぎ、チームで議論しやすくなることがポイントです。

SWOT分析

SWOT分析は、自社を取り巻く状況を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点で整理する手法です。一般的に、強みと弱みは内部環境、機会と脅威は外部環境として捉えます。

まず自社の現状を洗い出し、強みと弱みのリストを作ります。そのうえで、市場の成長性や競合状況、法規制や技術動向などを踏まえて、機会と脅威を整理します。最後に、「どの強みをどの機会にぶつけるか」「弱みと脅威が重なる領域はどう守るか」といった形で戦略に落とし込んでいきます。

SWOT分析は、シンプルで分かりやすく、経営戦略の入門としてもよく使われる手法です。

3C分析

3C分析は、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点から市場環境を分析する手法です。マーケティング戦略を考える際に特に役立ちます。

まず顧客について、どんな人が、どのようなニーズで、どの程度の規模の市場なのかを整理します。つぎに競合について、どんな企業がどのような製品・サービスを提供しているか、自社との違いは何かを分析します。そして最後に、自社の強み・弱み、提供価値を確認し、競合と比べたときのポジションを明らかにします。

3つのCの関係を俯瞰することで、「どの顧客に、どんな価値を提供すれば、競合と差別化できるのか」という視点で戦略を立てやすくなります。

VRIO分析

VRIO分析は、企業が持つ経営資源が長期的な競争優位につながるかどうかを判断するためのフレームワークです。VRIOは、Value(価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣困難性)、Organization(組織)的活用の頭文字を取ったものです。

まず、その資源が顧客にとって価値を生むかどうか(Value)、他社があまり持っていない希少なものか(Rarity)、真似されにくいか(Imitability)、そして組織として十分に活用できる体制が整っているか(Organization)の4つの観点からチェックします。

この4つをすべて満たす資源は、長期的な競争優位になりやすいと考えられます。逆に、どこかが不足している場合は、投資対象として適切かどうか、どのように強化・補完するかを考える材料になります。


3. 事業ポートフォリオとPPMの活用

この章では、複数の事業や製品をまとめて俯瞰し、どこに経営資源を集中させるかを考えるためのPPMと、その結果を販売・市場・製品分析にどうつなげるかを解説します。

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)

PPMは、企業がいくつもの事業や製品を持っている場合に、それぞれの位置づけを整理し、投資や撤退の判断を行うための手法です。一般的には、縦軸に市場成長率、横軸に市場シェア(または相対シェア)をとり、事業や製品をグラフ上に配置します。

このとき、事業は「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」といったカテゴリーに分類されます。成長性が高くシェアも高い「花形」には積極的な投資を行い、成長は鈍化しているものの高いシェアを持つ「金のなる木」からは収益を回収する、といった形で、全体のバランスを見ながら資源配分を考えます。

PPMを使うことで、感覚ではなくデータにもとづき、どの事業に注力し、どの事業の見直しを進めるべきかを検討しやすくなります。

販売分析

販売分析では、売上高や販売数量、客単価などのデータをもとに、どの製品やチャネル、顧客層が好調なのかを把握します。PPMやSWOT分析で「重点的に伸ばすべき事業」が見えてきたら、販売データを細かく見ることで、具体的にどの施策に力を入れるべきかを検討します。

たとえば、特定の地域だけ売上が伸びている場合は、その地域での成功要因を他の地域に横展開できないかを考えます。逆に、キャンペーンを行ったのに期待ほど売上が伸びなかった場合は、どの顧客層に響かなかったのかを販売データから検証します。

市場分析

市場分析は、対象とする市場の規模、成長性、競合状況、顧客ニーズなどを調べることです。PPMで市場成長率を判断する際にも、市場分析の結果が重要な材料になります。

新商品の投入や新規事業への参入を検討する際には、「その市場は今後伸びそうなのか」「競合はどの程度存在するのか」「どのようなニーズが未充足なのか」といった観点で市場を分析します。これにより、自社が参入すべきかどうか、参入するならどのポジションを狙うべきかを検討できます。

製品分析

製品分析は、自社の製品やサービスのラインナップを整理し、それぞれの収益性や成長性、競争力を評価することです。PPMのグラフにプロットする際にも、個々の製品の売上・利益データや競合との比較情報が必要になります。

製品分析を通じて、「利益は少ないが顧客との接点として重要な製品」「差別化要因になっている高付加価値製品」「市場が縮小しており見直しが必要な製品」などを見極めることができます。その結果、製品ラインナップの整理や、新製品開発の優先順位づけに役立ちます。


まとめ

この記事では、経営情報分析手法として、外部環境・内部環境の整理、SWOT分析、3C分析、VRIO分析、PPM、そして販売・市場・製品分析への活用方法を解説しました。

外部環境と内部環境をきちんと切り分けて整理することで、自社を取り巻く状況を客観的に把握しやすくなります。そのうえで、SWOT分析や3C分析、VRIO分析といったフレームワークを使うと、強み・弱みや市場でのポジション、競争優位につながる資源が見えやすくなります。

PPMは、複数の事業や製品を一覧し、どこに資源を集中させるかを考えるための有効なツールです。さらに、販売分析・市場分析・製品分析と組み合わせることで、データにもとづいた具体的なアクションプランにつなげることができます。

経営情報分析手法は、単に用語を暗記するものではなく、「なぜこの情報が必要なのか」「分析結果をどう意思決定に使うのか」を意識して学ぶことが大切です。フレームワークを上手に活用することで、勘や経験だけに頼らない、説得力のある経営戦略を立てられるようになります。

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この記事を書いた人

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の活動を陰ながら応援している、しがないソフトウェアエンジニア。
サトシ ナカモトの戦友。
ITやソフトウェアに関することをわかりやすくまとめ、多くの人にそれらを知ってもらおうと活動しています。
ご質問やご要望、お仕事依頼がございましたらお問合せフォームよりお願いいたします。

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