企業が顧客や市場から信頼を得るためには、利益を出すだけでなく「正しく・透明に」経営されていることが重要です。その仕組み全体を指すのがコーポレートガバナンスです。この記事では、コーポレートガバナンスの基本的な考え方と、それを支える「公益通報者保護法」と「内部統制報告制度」について整理して解説します。
1. 経営を監視するコーポレートガバナンス

この章では、コーポレートガバナンスとは何か、その目的と基本的な考え方を説明します。企業が健全に経営され、ステークホルダーから信頼を得るために、なぜコーポレートガバナンスが必要なのかを押さえておきましょう。
コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンスとは、企業の経営を適切に監督・牽制し、健全な経営活動を行うための仕組みのことをいいます。単に社内のルールを守るというだけではなく、株主や顧客、取引先、従業員、地域社会など、企業を取り巻くさまざまな関係者から信頼を獲得することを目的としています。
具体的には、取締役会や監査役、社外取締役といった組織によるチェック機能、業務プロセスや権限分掌のルール化、リスク管理やコンプライアンス体制の整備、情報開示の充実などがコーポレートガバナンスの一部です。これらの仕組みによって、経営トップの独断や不正会計、コンプライアンス違反などを未然に防ぎ、長期的に企業価値を高めていくことが期待されています。
コーポレートガバナンスが働いていない企業では、不正が見逃されたり、短期的な利益を優先しすぎたりして、最終的に顧客離れや株価の下落といった形で大きな損失につながることがあります。そのため、規模の大小にかかわらず、多くの企業にとって重要な経営テーマとなっています。
2. 内部からの告発を守る仕組み

この章では、コーポレートガバナンスを支える仕組みの一つである「公益通報者保護法」について解説します。従業員が不正を見つけたときに、安心して通報できる環境を整えることは、企業の健全性を高めるうえで欠かせません。
公益通報者保護法
公益通報者保護法は、企業や行政機関などの内部で違法行為などを発見した労働者が、その事実を通報したことを理由として、不利益な扱いを受けないように保護するための法律です。ここでいう「不利益な扱い」とは、解雇、降格、減給、配置転換など、通報した人に対する不当な報復措置を指します。
この法律により、従業員は自社内の通報窓口だけでなく、一定の条件のもとで行政機関や外部の窓口に対しても通報することができます。企業側には、内部通報制度を整備し、通報内容を適切に調査して改善につなげる責任が求められます。また、誰が通報したかが周囲に知られないよう、匿名性や秘密保持を確保することも重要なポイントです。
公益通報者保護法が機能することで、企業内部で起きている不正や違法行為が早期に発見されやすくなり、大きな不祥事に発展する前に対処できる可能性が高まります。これは、結果として企業自身を守り、顧客や市場からの信頼を維持することにもつながります。
3. 内部統制と透明な経営

この章では、財務報告の信頼性を高めるための「内部統制報告制度」について説明します。企業の決算書や財務情報は、投資家や取引先が企業を評価するうえで重要な資料であり、その正確性を担保することはコーポレートガバナンスの要となります。
内部統制報告制度
内部統制報告制度は、企業の財務報告が正しく行われるように、内部統制の整備・運用状況を経営者が評価し、その結果を報告する仕組みです。一般に「財務報告に係る内部統制」と呼ばれ、上場企業を中心に適用されています。
ここでいう内部統制とは、業務がルールに従って行われているか、誤った記帳や不正会計が起きないようになっているか、システムや権限管理が適切か、といった点をチェックする仕組みを指します。企業は、これらの仕組みを整えたうえで、実際に機能しているかどうかを自己評価し、その結果を「内部統制報告書」として公表します。さらに、その評価が妥当かどうかについて、監査人による検証も受けます。
内部統制報告制度によって、企業の財務情報の信頼性が高まり、投資家や市場に対して透明性の高い情報提供が行われることが期待されます。また、内部統制を整える過程で、業務プロセスの無駄やリスクが可視化され、業務改善にもつながるという効果があります。結果として、企業の健全な経営とコーポレートガバナンスの強化に寄与する制度だといえます。
まとめ
コーポレートガバナンスは、顧客や市場から信頼を獲得するために、企業の経営活動を健全化するための取り組み全体を指します。その背景には、単に利益を追求するだけでなく、不正を防ぎ、透明性の高い経営を行うことで、長期的に企業価値を高めていくという考え方があります。
このコーポレートガバナンスを支える具体的な仕組みとして、内部からの告発者を守る「公益通報者保護法」、財務報告の信頼性を高める「内部統制報告制度」が位置づけられます。公益通報者保護法は、不正を見つけた従業員が安心して通報できる環境を整え、内部統制報告制度は、経営者自らが内部統制の有効性を確認し、公表することを求めるものです。
これらの取り組みは、いずれも「企業の行動は社会から常に見られている」という前提に立ち、信頼される企業であり続けるための仕組みづくりだといえます。コーポレートガバナンスの考え方と関連する制度を理解しておくことは、企業で働くうえで欠かせない視点となります。


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