【ITパスポート試験】No.022|取引関連法規

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企業同士の取引や、消費者との売買、ネットでの決済・投資などは、さまざまな法律によってルールが決められています。
ここでは、下請け取引、金融分野のIT活用、広告・表示規制に関する代表的な法律と、関連する取引法規をまとめて整理します。


目次

1. 企業同士の取引を公正にする法律

この章では、企業と企業の取引が不公平にならないようにするための法律を扱います。特に、大企業と中小企業の力関係の差を是正する法律や、市場での競争を守る法律、デジタルプラットフォーム事業者に関する法律について解説します。

下請法(下請代金支払遅延等防止法)

下請法は、親事業者が下請事業者に対して不利益な扱いをしないように定めた法律です。
特に、以下のような行為を防ぐことを目的としています。

  • 下請代金の支払を不当に遅らせる
  • 一方的な値引きや返品を強要する
  • 理由なく取引数量を減らす

これらは、力の強い企業が弱い立場の下請事業者に対して行いやすい行為です。
下請法は、このような行為を禁止し、下請事業者の利益を保護する役割を持っています。

独占禁止法

独占禁止法は、市場での公正な競争を守るための基本的な法律です。
例えば、次のような行為を規制します。

  • 企業同士が価格を事前に相談して決める「カルテル」
  • 他社の参入を妨害して市場を独占する行為
  • 取引先に対して不当に不利な条件を押しつける行為

公正な競争が行われることで、消費者はより良い商品やサービスを、適正な価格で選べるようになります。

特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律

この法律は、オンラインモールやアプリストアなどの「特定デジタルプラットフォーム」を対象としたものです。
出店者やアプリ提供者にとって、利用条件や手数料、検索順位の仕組みが見えにくいことが問題になっていました。

そこで、この法律により次のようなことが求められます。

  • 利用条件や手数料体系をわかりやすく開示する
  • 検索表示順位などの決まり方の概要を説明する
  • 契約の変更や停止のルールを明確にする

これにより、プラットフォームを利用する事業者にとって透明性・公正性が高まり、不意打ちのような不利益を受けにくくなります。


2. 消費者を守るための取引ルール

この章では、企業と消費者の間の取引に関する法律を扱います。ネット通販や訪問販売、広告表示、製品の安全性など、私たちの日常生活に密接に関わるルールが多く含まれます。

特定商取引法

特定商取引法は、消費者トラブルが起こりやすい取引形態に対して、事業者が守るべきルールを定めた法律です。対象となるのは、例えば次のような取引です。

  • 訪問販売
  • 電話勧誘販売
  • 通信販売(ネット通販など)
  • 連鎖販売取引(マルチ商法など)

この法律によって、クーリング・オフ制度(一定期間内なら無条件で契約を解除できる仕組み)が認められたり、誇大広告や不実告知が禁止されたりしています。

景品表示法(景品表示法による広告・ステマ規制)

景品表示法は、消費者をだますような広告表示を規制する法律です。
この法律では、主に次のような行為を禁止・規制しています。

  • 実際よりも著しく商品・サービスが優れているように見せる「優良誤認表示」
  • 実際よりも著しく有利な価格や条件だと誤解させる「有利誤認表示」
  • 過大な景品(高額すぎるおまけ)をつけて冷静な判断を妨げる行為

さらに、広告であるにもかかわらず広告であることを隠して行う「ステルスマーケティング(ステマ)」も問題視されています。
景品表示法では、このようなステマも規制の対象となり、消費者が公平な情報で判断できるようにすることを目指しています。

PL法(製造物責任法)

PL法は、製品の欠陥によって消費者に被害が発生した場合の責任について定めた法律です。

従来は、消費者がメーカーの「過失」を立証しないと、損害賠償を求めることは難しいケースが多くありました。
PL法では、製品に「欠陥」があったことと、その欠陥が原因で被害が出たことを示せば、メーカーなどが責任を負うしくみになっています。

これにより、企業は安全性をより重視するようになり、消費者も安心して製品を利用しやすくなります。


3. ITと関わりの深い金融・決済の法律

この章では、金融分野におけるITの活用に関連する法律をまとめます。キャッシュレス決済やポイント、暗号資産、ネット証券など、ITを前提としたサービスが対象になります。

資金決済法

資金決済法は、前払式支払手段(プリペイドカード、電子マネーなど)や、資金移動業(送金サービス)、さらには暗号資産などを対象とした法律です。

ITの発達により、現金を使わない支払方法が増えましたが、事業者の倒産や不正利用が起きた場合、利用者が大きな損害を受けるおそれがあります。

資金決済法では、例えば次のようなルールを定めています。

  • 前払式支払手段の未使用残高の一定割合を供託などで保全する
  • 資金移動業者に登録制や業務規制を設ける
  • 暗号資産交換業者に対する登録・管理体制の義務づけ

これにより、キャッシュレスサービスをより安全に利用できるようにしています。

金融商品取引法

金融商品取引法は、株式や投資信託、デリバティブなどの金融商品を対象にした法律です。
ネット証券やスマホアプリでの投資が一般的になり、ITを通じて誰でも取引できるようになった一方で、情報の非対称性や不正行為のリスクも高まりました。

この法律では、次のような点が重視されています。

  • 投資家に対する適切な情報開示(有価証券報告書など)
  • インサイダー取引の禁止
  • 不公正取引(相場操縦など)の規制
  • 金融商品取引業者に対する登録・監督

ITを利用した高速取引やオンライン取引であっても、これらのルールに従って、公正な市場を維持することが求められます。


まとめ

取引関連法規は、

  • 企業同士の取引の公平さを守る法律(下請法、独占禁止法、特定デジタルプラットフォームに関する法律)
  • 消費者を保護する法律(特定商取引法、景品表示法、PL法)
  • ITと深く関わる金融・決済の法律(資金決済法、金融商品取引法)

といった形で役割が分かれています。

下請代金の支払遅延を防いだり、誇大広告やステルスマーケティングを規制したり、キャッシュレス決済やネット投資を安全に利用できるようにしたりと、どれも実務や日常生活に直結する内容です。

ITパスポート試験では名称や概要を問われることが多いため、それぞれの法律が「誰を」「どのような取引から」守るためのものか、セットで押さえておくと理解しやすくなります。

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この記事を書いた人

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の活動を陰ながら応援している、しがないソフトウェアエンジニア。
サトシ ナカモトの戦友。
ITやソフトウェアに関することをわかりやすくまとめ、多くの人にそれらを知ってもらおうと活動しています。
ご質問やご要望、お仕事依頼がございましたらお問合せフォームよりお願いいたします。

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