【ITパスポート試験】No.019|パーソナルデータの保護に関する国際的な動向

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インターネットサービスやクラウド、SNSは国境を越えて利用されます。すると、個人データの扱いについても「一国だけのルール」では対応しきれません。そこで近年は、EUを中心に各国・地域がルールを整備し、国際的な共通枠組みづくりが進んでいます。ここでは、その代表例であるGDPRと、「忘れられる権利」「仮名化」「匿名化」といったキーワードを通して、世界の流れをコンパクトに整理します。


目次

1. 世界で進むパーソナルデータ保護の流れ

この章では、「パーソナルデータ保護の国際的な動向」という全体像を押さえます。

インターネット上のサービスは国境を問いませんが、個人データをどう守るかについては本来、各国の法律が関係します。そこで問題になるのが、「国ごとにルールがバラバラだと、どの国の法律を守ればよいのか分からない」ということです。

特にEUは早くから個人データ保護に力を入れ、「個人の権利を強く守る」方向で厳しいルールを整備してきました。その代表が一般データ保護規則(GDPR)です。GDPRはEU域内だけでなく、EUの人にサービスを提供する世界中の企業にも影響するため、事実上“世界標準”のような役割を持っています。

また、個人データを一切使わないという選択肢は、ビッグデータやAIの時代には現実的ではありません。そこで、「データを活用しながら、個人のプライバシーも守る」ことを目指して、仮名化・匿名化などの技術的な工夫や、「忘れられる権利」のような新しい権利の考え方が広がってきました。


2. GDPRと個人の権利の強化

この章では、国際的な動向の中心となっているGDPRと、そこから生まれた個人の権利の考え方を見ていきます。

一般データ保護規則(GDPR)

GDPR(General Data Protection Regulation)は、EUにおける個人データ保護のための包括的な規則です。特徴的なのは、EU域内の企業だけでなく、「EU在住者の個人データを扱う世界中の組織」に適用される点です。
そのため、日本企業であっても、EUの利用者向けにサービスを提供していれば、GDPRを意識した対応が必要になります。

GDPRでは、個人データの取得・利用・保存・削除に関して厳しいルールが定められており、違反した場合の制裁金も高額です。一方で、「本人が自分のデータをコントロールできるようにする」という考え方が重視されており、後述する「忘れられる権利」など、多くの権利が明確に規定されています。

忘れられる権利(消去権)

「忘れられる権利」とは、インターネット上に残り続ける自分の情報について、「もう必要ない」「古くて不正確」「公開され続けると不利益が大きい」といった場合に、その削除を求めることができる権利の考え方です。
GDPRでは、これに相当する権利として「消去権」が規定されています。

たとえば、昔のトラブル記事や古い個人情報が検索結果にいつまでも表示されると、就職や社会生活に影響することがあります。そうした場合に、一定の条件のもとで削除を求められるようにすることで、「一生消えないデジタルタトゥー」の問題を緩和しようとしているのです。

もちろん、「公共の利益」や「表現の自由」とのバランスも必要なため、何でも自由に消せるわけではありません。しかし、個人が自分の情報に対して、より強いコントロール権を持つという方向性を示した点で、国際的にも大きな意味を持つ考え方です。


3. データ活用とプライバシー保護

この章では、「データは活用したいが、個人が特定されては困る」というニーズに応えるための考え方として、仮名化と匿名化を説明します。

仮名化

仮名化とは、名前や会員番号など「誰のデータかが分かる情報」を、別の記号や番号に置き換えることです。置き換えの対応表を別に安全に保管しておけば、必要に応じて元の個人をたどることもできます。

たとえば、医療機関が患者ごとの治療データを分析したいとき、氏名や住所を別のIDに置き換えてから分析すれば、研究者側からは「個人が特定できないデータ」として扱いやすくなります。一方で、何か問題が見つかった場合には、対応表を使って元の患者に連絡することも可能です。

このように仮名化は、「個人を直接識別しないようにしつつ、必要があれば紐づけられる」という、中間的な位置づけの方法だとイメージすると分かりやすいです。

匿名化

匿名化は、誰のデータかを特定できないよう、個人に結びつく情報を取り除いたり、統計的に加工したりすることです。仮名化と異なり、元の個人を復元できない(あるいは非常に困難)な状態にすることが目標です。

たとえば、年齢を「20代」「30代」といった幅のある項目にまとめる、住所を市区町村レベルまでにとどめる、少人数しかいない組み合わせは集計から外す、といった工夫を組み合わせて、個人が推測されない形にします。

匿名化されたデータは、マーケティング分析や統計調査、AIの学習データなどに活用しやすくなります。GDPRや各国の法律でも、十分に匿名化されたデータについては、個人データ保護の規制対象外とみなされる場合があります。そのため、「どこまで加工すれば匿名化といえるか」が、技術面・法制度面の両方で重要なテーマとなっています。


まとめ

最後に、「パーソナルデータの保護に関する国際的な動向」のポイントを整理します。

  • インターネットサービスの国際化に伴い、各国・地域でパーソナルデータ保護のルール整備が進み、とくにEUのGDPRは世界的な影響力を持つ規則になっています。
  • GDPRは、「個人が自分のデータをコントロールできること」を重視し、その一例として「忘れられる権利(消去権)」を明確に規定しています。
  • データ活用とプライバシー保護を両立させるために、「仮名化」「匿名化」といった加工の考え方が重要になっており、これらを前提としたデータ利活用の仕組みづくりが国際的に進んでいます。

パーソナルデータの保護は、もはや一国だけの問題ではなく、国際的なルールを意識せざるを得ない時代になっています。世界の流れを押さえながら、「データをどう守り、どう活かすか」という視点で考えることが、これからますます重要になっていきます。

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この記事を書いた人

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の活動を陰ながら応援している、しがないソフトウェアエンジニア。
サトシ ナカモトの戦友。
ITやソフトウェアに関することをわかりやすくまとめ、多くの人にそれらを知ってもらおうと活動しています。
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