【ITパスポート試験】No.168|リスクマネジメント

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本記事では、組織が直面するさまざまなリスクに対して「特定・分析・評価・対応」という流れで対処していくリスクマネジメントの基本と、事故などが発生したときに備えた対応マニュアルや教育・訓練の重要性、さらにリスクアセスメントやリスク対応の具体的な考え方を解説します。

目次

1. リスクマネジメントの全体像

本章では、リスクマネジメントとは何か、その一連の流れと、いざというときに慌てないためのマニュアル整備や教育・訓練の必要性について説明します。

リスクマネジメントとは

リスクマネジメントとは、組織にとって不都合な出来事(事故・障害・情報漏えい・自然災害など)が起こる可能性を把握し、その影響を小さくするための取り組み全体を指します。単に「危ないことを避ける」という感覚的な対応ではなく、計画的・継続的にリスクに向き合う管理活動だと考えるとわかりやすいです。

具体的には、リスクマネジメントは「リスクの特定 → リスクの分析 → リスクの評価 → リスクへの対応」という流れで実施されます。まずどんなリスクがあるかを洗い出し、それぞれの発生確率や影響度を考え、対策の優先順位を決めてから、具体的な対応策を実行していくというステップになっています。

事前準備としてのマニュアル・教育・訓練

社員が避難訓練をしたり、マニュアルを片手に手順を確認しているイラストを思い浮かべてください。リスクマネジメントでは、事故やトラブルが発生したときにあわてないよう、事前の準備が非常に重要です。

たとえば、システム障害が発生したときに誰が何をするのか、情報漏えいが疑われたときにどの部署へ連絡するのか、といった内容をまとめた「対応マニュアル」を整備しておく必要があります。マニュアルがなければ、現場の担当者はその場の判断で動くしかなく、対応のばらつきや二次被害につながりやすくなります。

また、マニュアルを作っただけでは十分ではありません。マニュアルの内容を周知する教育や、実際の状況を想定した訓練を繰り返すことで、初めて実効性のあるリスクマネジメントになります。ITパスポート試験でも、こうした「日ごろからの準備」がリスクを小さくするうえで欠かせないポイントとして問われます。

2. リスクアセスメントのプロセス

本章では、リスクマネジメントの前半部分である「リスクアセスメント」の全体像と、その中に含まれるリスク特定・リスク分析・リスク評価の考え方を順に説明します。

リスクアセスメント

リスクアセスメントとは、組織が抱えるリスクを体系的に洗い出し、その大きさを見積もる一連の活動をまとめた呼び方です。ここでいう一連の活動には、リスク特定・リスク分析・リスク評価の3つのステップが含まれます。

まず、どのような場面でどんなトラブルが起こりうるのかを洗い出し(リスク特定)、次にそのリスクがどのくらいの確率で、どの程度の影響を与えるのかを考え(リスク分析)、最後に、他のリスクと比べてどのくらい重要で、どれから対策すべきかを判断します(リスク評価)。このリスクアセスメントを丁寧に行うことで、限られた資源を本当に重要なリスクに集中させることができます。

リスク特定

リスク特定では、業務やシステムに潜むリスクをできるだけ漏れなく洗い出します。業務フロー図やネットワーク構成図を眺めながら、「ここでミスが起きたらどうなるか」「ここが止まったら誰に影響が出るか」といった観点で検討していきます。過去の事故・トラブル履歴や、他社の事例を参考にするのも有効です。

この段階では、リスクを完全に評価する必要はなく、「とにかく候補を挙げる」ことが大切です。思いついたリスクを付箋や一覧表に書き出し、あとから整理していくイメージで進めます。小さなリスクに見えても、組み合わさると大きな問題になることがあるため、現場の声を広く集めることがポイントになります。

リスク分析

リスク分析では、特定されたリスクについて「発生確率」と「発生したときの影響度」を見積もります。たとえば、「年に1回程度起こりうる」「発生すると数時間システムが止まる」など、定性的・定量的な評価を行います。場合によっては、統計データを使ってより精緻に分析することもあります。

分析の結果は、たとえば縦軸に影響度、横軸に発生確率をとったマトリックスにプロットし、「高確率・大影響」のリスクをすぐに見つけられるように整理します。この作業によって、なんとなく不安だった事柄が「どの程度危険なのか」を客観的に把握でき、後のリスク評価とリスク対応の判断がしやすくなります。

リスク評価

リスク評価は、分析結果をもとに「どのリスクから優先的に対策するか」を決める段階です。同じような発生確率でも、影響度が大きいリスクは優先度を高く設定する必要がありますし、逆に影響度が小さいリスクは、場合によっては後回しにすることもあります。

このとき、組織として受け入れられるリスクの範囲(許容リスク)を決め、それを超えるものを重点的に対策する、という考え方がよく用いられます。限られた予算や人員の中で、どのリスクにどれだけ対策を投じるかを決めるのがリスク評価の役割であり、その結果が次のリスク対応の方針につながっていきます。

3. リスク対応の考え方

本章では、評価されたリスクに対して実際にどのような行動をとるかを決める「リスク対応」と、その具体的なパターンであるリスク回避・リスク共有(リスク移転・リスク分散)・リスク保有について解説します。

リスク対応

リスク対応とは、リスク評価の結果に基づき、各リスクに対してどのような対策を実施するかを決定し、実行することです。対応の方針は1つとは限らず、複数の方法を組み合わせてリスクを低減することもよくあります。

たとえば、システム障害のリスクに対しては、障害の原因となる構成を見直して「回避」するか、バックアップ機を用意して影響を「分散」するか、障害が起きた場合の損害を保険で「移転」するか、あるいは一定の障害は受け入れてコストを抑える「保有」を選ぶか、といった選択肢があります。これらの組み合わせを検討するのがリスク対応の中心的な作業です。

リスク回避

リスク回避は、そのリスクの原因となる行為や仕組み自体をやめてしまい、リスクを発生させないようにする方法です。たとえば、セキュリティ上の不安が大きい無料クラウドサービスの利用を中止し、より安全な社内システムのみに限定するといった対応が該当します。

リスク回避は、リスクをほぼ完全になくせる一方で、その業務のメリットも同時に失うことになります。そのため、ビジネス上の利益とリスク回避による安全性の向上を比較し、慎重に判断する必要があります。すべてのリスクを回避しようとすると、業務が成り立たなくなってしまう点に注意が必要です。

リスク共有

リスク共有は、自社だけでリスクを抱え込まず、他者と分け合うことで1社あたりの負担を軽くする方法です。多くの場合、契約や仕組みを通じて、損害が発生したときの負担を複数の主体で分担する形をとります。

このリスク共有には、代表的なやり方としてリスク移転とリスク分散があります。どちらも「一部を他者に持ってもらう」という点では同じですが、具体的な仕組みや狙いが少し異なりますので、それぞれを分けて押さえておくことが大切です。

リスク移転

リスク移転は、保険契約やアウトソーシング契約などを通じて、損害が発生したときの金銭的な負担を別の組織に移す方法です。たとえば、火災保険に加入しておくことで、火災による建物の損害を保険会社に補償してもらう、といったケースが典型例です。

ITの分野でも、システム運用を外部のデータセンター事業者に委託し、障害時の復旧責任や損害賠償責任を契約で明確にすることで、一定のリスクを移転することができます。ただし、リスクを完全に他者任せにできるわけではなく、契約内容を十分に確認し、自社側で残るリスクも把握しておく必要があります。

リスク分散

リスク分散は、特定の1つに集中しているリスクを複数に分けることで、1回あたりの損害を小さくする方法です。たとえば、データセンターを1か所ではなく複数拠点に分ける、バックアップを複数の媒体に保存する、といった対策がリスク分散にあたります。

分散の考え方は、IT以外にも投資や仕入れ先の選定など、さまざまな場面で応用されています。1か所に依存していると、その1か所でトラブルが起きたときに致命的な影響を受けてしまいますが、あらかじめ分散しておけば、一部に問題が発生しても全体としては致命傷を避けられる可能性が高まります。

リスク保有

リスク保有は、コストや業務への影響などを理由に、「あえて対策をとらず、そのリスクを受け入れる」と決める方法です。すべてのリスクに対して完璧な対策を行うことは現実的ではないため、ある程度のリスクを保有する判断は、実務上避けて通れません。

もちろん、なんとなく放置するのではなく、「発生確率や影響度を考えても、対策コストのほうが大きい」といった理由をもって保有を選ぶことが重要です。リスクを保有する場合でも、発生した際の対応手順を決めておくなど、被害を最小限に抑える工夫は必要になります。

まとめ

リスクマネジメントは、「リスクをなくす魔法」ではなく、「限られた資源の中で、被害をなるべく小さくするための考え方と仕組み」だという点を押さえておくことが大切です。

まず、リスクマネジメントは「リスクの特定・分析・評価・対応」という流れで進める体系的な活動であり、その土台にはリスクアセスメントがあります。どんなリスクがあるのかを洗い出し、その大きさを見積もり、優先順位を決めることで、対策の方向性がはっきりします。また、事故などが起きたときに慌てないよう、対応マニュアルの整備や教育・訓練といった事前準備が欠かせません。

次に、リスク対応には、リスク回避・リスク共有(リスク移転・リスク分散)・リスク保有といった代表的なパターンがあり、状況に応じてこれらを組み合わせることが求められます。すべてを回避することも、すべてを保有することも現実的ではないため、「どのリスクをどの程度まで許容するか」というバランス感覚が重要になります。ITパスポート試験では、これらの用語の意味だけでなく、全体の流れの中でどの位置づけになるのかを意識して理解しておくと、関連問題にも対応しやすくなります。

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この記事を書いた人

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の活動を陰ながら応援している、しがないソフトウェアエンジニア。
サトシ ナカモトの戦友。
ITやソフトウェアに関することをわかりやすくまとめ、多くの人にそれらを知ってもらおうと活動しています。
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