本記事では、プログラミングで重要となるコーディング標準とプログラム構造について、なぜルールを決めてコードを書く必要があるのかという観点から、字下げや命名規則、モジュール分割、メインルーチンとサブルーチン、さらにライブラリやAPI、近年注目されるローコード/ノーコードまでを一つずつ整理して解説します。
1. 読みやすいコードを作るコーディング標準

この章では、コーディング標準がなぜ必要なのか、その目的と効果を意識しながら、字下げ(インデンテーション)、ネストの深さ、命名規則といった「読みやすさ」に直結するルールを確認していきます。
字下げ(インデンテーション)
字下げ(インデンテーション)とは、行の先頭にスペースやタブを入れて、コードの階層構造をそろえる書き方のことです。if文やループの中に書かれた処理を一段右に下げて表示することで、どこからどこまでが同じまとまりかが一目で分かるようになります。同じアルゴリズムでも、字下げが整っているかどうかで読みやすさは大きく変わります。
コーディング標準では、「何文字分インデントするか」「タブとスペースのどちらを使うか」をチームで統一することがよく行われます。ルールを決めておけば、誰が書いたコードでも同じ見た目になるため、保守やレビューがしやすくなります。特に、複数人で開発するプロジェクトでは、インデントの揺れを放置するとそれだけで読みにくいコードになってしまうため、基本的なマナーとして身につけておきたいポイントです。
ネストの深さ
ネストの深さとは、if文やループなどのブロックが、どれだけ入れ子構造になっているかを表す指標です。例えば、「ifの中にfor、その中にさらにif」があるようなコードは、ネストが深くなっている状態です。ネストが深くなると、どの条件がどこまで効いているのかを追うのが難しくなり、バグの原因にもなります。
コーディング標準では、「ネストは○段までを目安にする」「深くなり過ぎたら処理を分割する」といったガイドラインを設けることがあります。条件を早めに抜けるよう書き方を工夫したり、処理を関数に切り出したりすることで、ネストを浅く保つことができます。読み手の負担を減らすという意味で、ネストの深さを意識することは、コーディング標準の重要な要素の一つです。
命名規則
命名規則とは、変数名や関数名、ファイル名などをどのようなルールで付けるかを定めたものです。例えば、「単語の区切りにアンダースコアを使う(total_amount)」「先頭を小文字にして、単語の頭を大文字にする(totalAmount)」といったスタイルをあらかじめ決めておくイメージです。さらに、「クラス名は先頭を大文字」「定数はすべて大文字」など、名前の役割によって書き方を変えることもあります。
命名規則が統一されていると、コードを初めて読む人でも「これは何の役割の名前か」を推測しやすくなります。また、検索や置換もしやすくなるため、保守や機能追加の効率も上がります。逆に、バラバラな名前が混在していると、同じ意味のものが複数あるように見えたり、誤って似た名前を使ってしまったりする原因になります。コーディング標準で命名規則を決めておくことは、チーム開発における基本中の基本と言えます。
2. 分かりやすいプログラム構造を作る工夫

この章では、モジュール分割やメインルーチンとサブルーチンといった考え方を通じて、プログラム全体をどのように構造化すると分かりやすく、保守しやすくなるのかを整理します。
モジュール分割
モジュール分割とは、プログラム全体を、役割ごとにまとまった部品(モジュール)に分けて設計・実装することです。例えば、「画面表示部分」「データベースアクセス部分」「計算ロジック部分」などに分け、それぞれを独立したモジュールとして管理するイメージです。これにより、ある機能を修正するときに、関係する部分だけに集中できるようになります。
モジュール分割がうまくできていると、チームで作業を分担しやすくなり、変更の影響範囲も把握しやすくなります。一方で、モジュール同士が互いに密接に依存しすぎていると、どこか一か所を変えただけで他の部分に思わぬ影響が出ることがあります。コーディング標準では、「モジュールは○○の単位で分割する」「公開インタフェースは最小限にする」などの方針を定めることで、保守性の高い構造を目指します。
メインルーチン
メインルーチンとは、プログラムの中心となる処理の流れをまとめた部分で、「最初にどの処理を行い、その次に何をするか」を上から順に記述する場所です。人間の目線で見たときに、「プログラム全体のストーリー」を追いやすくする役割を持っています。多くの言語では、「main」という名前の関数として定義されることが多く、プログラム実行時にここから処理がスタートします。
メインルーチンの中には、細かい処理を直接書くのではなく、「入力処理」「計算処理」「出力処理」といったサブルーチンを呼び出す記述を中心に置くのが一般的です。こうすることで、メインルーチンは「処理の流れを示す地図」として読みやすくなり、詳細はそれぞれのサブルーチンの中を見れば分かる、という構造になります。コーディング標準でメインルーチンの役割を明確にしておくと、どのプログラムでも同じ感覚で読み始めることができます。
サブルーチン
サブルーチンとは、ある特定の処理をひとまとめにして呼び出せるようにした部分で、関数やメソッドと呼ばれることもあります。例えば、「売上合計を計算する」「入力値をチェックする」「ファイルに保存する」など、目的ごとにサブルーチンを作っておけば、同じ処理を複数の場所から再利用できます。
サブルーチンをうまく設計すると、コードの重複を減らせるだけでなく、テストや修正もしやすくなります。一つのサブルーチンが複数の役割を持ち始めたら、さらに細かく分割できないかを検討するのが良い習慣です。コーディング標準では、「サブルーチンは一つの責務に絞る」「長さは○行程度を目安にする」などの方針を定めることで、読みやすく再利用しやすいプログラム構造を保つことを目指します。
3. ライブラリとAPIによる効率的な開発

この章では、外部のライブラリやAPIを利用することで、どのように効率的なプログラミングが可能になるのかを、ライブラリ、API、WebAPIという用語とともに確認します。
ライブラリ
ライブラリとは、よく使われる処理をあらかじめまとめて提供している「部品集」のようなものです。たとえば、日付や時刻の計算、ファイル操作、グラフ描画、暗号化など、毎回一から自分で実装すると大変な処理が、ライブラリとして用意されていることがよくあります。プログラマは、ライブラリを呼び出すための決められた手順(関数名やパラメータ)さえ守れば、その中身の詳細な実装を知らなくても利用できます。
外部のライブラリを活用することで、開発者は「自分たちのアプリならではの機能」に集中できるようになります。また、多くのライブラリは複数の開発者によって改良され続けているため、性能や信頼性の面でも自前実装より優れている場合が少なくありません。コーディング標準の観点では、「標準ライブラリを優先して使う」「よく使う外部ライブラリとバージョンを統一する」などのルールを設けることで、チーム全体の開発効率と品質を高めることができます。
API
API(Application Programming Interface)は、プログラム同士がやり取りするための「窓口」や「取り決め」のことです。あるソフトウェアが提供する機能を、別のプログラムから呼び出す際に、「どの名前の関数を呼ぶか」「どんな値を渡し、どんな形で結果が返ってくるか」を定めたものだと考えるとイメージしやすいでしょう。ライブラリを利用するときに参照する関数一覧も、広い意味ではAPIと言えます。
APIが公開されていると、外部の開発者はそのソフトウェアの内部構造を知らなくても、決められた手順で機能を利用できます。たとえば、地図サービスのAPIを使えば、自分のアプリに地図機能を組み込めますし、決済サービスのAPIを使えば、クレジットカード決済を自前で実装せずに実現できます。APIの存在は、システム同士をつなぎ合わせて新しいサービスを素早く構築するうえで、非常に重要な役割を果たしています。
WebAPI
WebAPIは、インターネット上のHTTPなどのプロトコルを使って提供されるAPIのことです。Webブラウザやスマホアプリが、サーバ上のサービスとデータをやり取りするときに使われる仕組みで、「特定のURLにリクエストを送ると、決められた形式(JSONなど)で結果が返ってくる」という形が典型的です。天気情報、為替レート、SNSの投稿データなど、多くのサービスがWebAPIとして公開されています。
WebAPIを利用すると、自分たちでは持っていないデータや機能を、インターネット越しに呼び出して利用できます。例えば、自社アプリから外部の翻訳サービスやAIサービスのWebAPIを呼び出すことで、高度な機能を短時間で組み込むことが可能になります。コーディング標準の観点では、「どのWebAPIを利用するか」「認証情報をどのように管理するか」といったルールを整えておくことで、安全かつ効率的な開発を進めることができます。
4. ローコード/ノーコードという新しい開発スタイル

この章では、近年急速に広がっているローコード開発とノーコード開発について、従来のプログラミングとの違いや、どのような場面で活用されているのかを整理します。
ローコード
ローコード開発は、「コードを書く量を少なくしてアプリを作れるようにした開発スタイル」のことです。画面設計やデータベースの定義をGUI(グラフィカルな画面操作)で行いながら、必要な部分だけをプログラムコードでカスタマイズするようなツールが代表例です。ワークフローシステムや業務アプリなど、定型的な構造を持つシステムの開発に向いています。
ローコードツールを使えば、従来なら開発者が一から実装していた画面遷移や基本的な入力チェックなどが、あらかじめ用意されたコンポーネントを組み合わせるだけで実現できます。その一方で、複雑な処理や特殊な要件を満たすには、やはりプログラム言語によるカスタマイズが必要になることもあります。コーディング標準やプログラム構造の知識は、ローコード環境でも「どの部分を共通化するか」「どうやって分かりやすい構成にするか」を考える際に役立ちます。
ノーコード
ノーコード開発は、基本的にプログラムコードを書かずにアプリを作る開発スタイルです。画面上の部品を配置し、設定画面で条件や連携先を指定するだけで、簡単な業務アプリやWebサービスを構築できるツールがこれにあたります。現場の担当者が自分たちで業務フローをデジタル化する「市民開発(シチズンデベロップメント)」という流れとも相性が良いとされています。
ノーコードは手軽でスピード感がある一方、できることの範囲はツールの機能に依存します。複雑なロジックや他システムとの細かな連携が必要になると、従来のプログラミングやローコードによるカスタマイズが求められる場合もあります。ITパスポート試験では、「ローコード/ノーコードは、コードを書く量を減らし、非エンジニアでもアプリを作りやすくするための仕組みである」というイメージを押さえておくと良いでしょう。
まとめ
本記事では、字下げやネストの深さ、命名規則といったコーディング標準の要素から始めて、モジュール分割やメインルーチン・サブルーチンによるプログラム構造の考え方を確認しました。これらは、コードを「自分だけでなく他人にも読みやすくする」「長く安全に保守できるようにする」ための基本的なルールです。
続いて、ライブラリやAPI、WebAPIを利用することで、外部の機能やサービスを取り込みながら効率的にプログラミングできることを見てきました。すべてをゼロから作るのではなく、信頼できる部品を組み合わせる発想は、開発スピードと品質の両方を高めるうえで欠かせません。どのライブラリやAPIを利用するのか、バージョンや使い方をチームで統一することも、広い意味でのコーディング標準の一部と言えます。
最後に、ローコード/ノーコードという新しい開発スタイルについて触れました。これらのツールは、非エンジニアでもアプリを作れるようにする一方で、複雑な要件を満たすには従来型のプログラミングや設計の知識が依然として重要であることも示しています。コーディング標準やプログラム構造の基礎を理解しておけば、コードを書く場合はもちろん、ローコード/ノーコードツールを選定・運用する場面でも、より適切な判断ができるようになります。プログラミングの世界を「きれいなルールと構造で成り立つ仕組み」としてとらえ、実務や試験に生かしていきましょう。


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