【ITパスポート試験】No.024|情報倫理

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データやAIが社会のあらゆる場面で使われるようになり、私たち一人ひとりが「情報をどう扱うか」という倫理観を持つことが重要になっています。この記事では、データ駆動型社会で守るべきルールやマナー、AIやSNSに関わるリスクとその対策を、関連用語とともに整理して解説します。


目次

1. データ社会とAIの倫理課題

この章では、データ駆動型社会で守るべき法令やモラル、AIが扱うデータに関する個人情報保護・プライバシー・秘密保持のポイント、そして「ELSI」と呼ばれる倫理的な課題について整理します。

データ駆動型社会と法令・社会的規範・モラル

現代社会では、行動履歴や購入履歴、位置情報など、あらゆる行動がデータとして記録され、分析される「データ駆動型社会」が進んでいます。
このような社会で行動する際には、法律だけでなく、社会的規範やモラル、倫理にも配慮する必要があります。

たとえば、著作権法を守って他人の作品を無断でコピーしないこと、個人情報保護法に従って個人を特定できる情報をむやみに公開しないことは、最低限守るべき法令です。さらに、法令で禁止されていなくても、他人を不当に傷つける書き込みをしない、デマを拡散しないといった、社会的なマナーや倫理も求められます。
「法令+社会的規範+モラル」をセットで意識することが、情報倫理の出発点です。

AIと個人情報保護

AIは大量のデータを学習することで、高い精度の推論や予測を行います。その学習データには、氏名・住所・顔写真・位置情報などの個人情報が含まれる場合があります。
このようなデータを扱うときは、本人の同意の取り方、利用目的の明示、必要最小限の取得など、個人情報保護の考え方に沿って運用することが重要です。

また、AIが生成したデータにも個人情報が含まれてしまうことがあります。たとえば、生成された文章や画像に特定の個人を想起させる情報が入っている場合です。学習に使うデータだけでなく、「AIが出力した結果」も含めて、個人情報保護の観点からチェックし、適切に管理する姿勢が求められます。

プライバシーと秘密保持の考え方

個人情報保護と並んで重要なのが、プライバシーと秘密保持の考え方です。
プライバシーは、「他人に知られたくない個人的な情報を、自分でコントロールする権利」です。位置情報の共有範囲や、SNSへの写真投稿範囲の設定など、日常的な行動すべてがプライバシーに関わります。

一方、秘密保持は、業務上知り得た情報や機密情報を、外部に漏らさないように守ることです。たとえば、顧客リストや取引条件、開発中の技術情報などは、社外に持ち出したり、第三者に話したりしてはいけません。
AIやクラウドサービスを利用する場面でも、誰がどの情報にアクセスできるのか、権限管理や契約内容を確認しながら秘密保持を徹底する必要があります。

倫理的・法的・社会的な課題(ELSI)

ELSI(Ethical, Legal and Social Issues)は、日本語では「倫理的・法的・社会的な課題」と呼ばれます。新しい技術を社会に導入する際、その技術がもたらす影響を、倫理・法律・社会の3つの観点から総合的に検討する考え方です。

AIやビッグデータの活用は、便利さや効率性を生み出す一方で、差別の助長、監視社会の進行、説明のつかない判断(ブラックボックス化)などの懸念もあります。
ELSIの観点では、技術の利点だけでなくリスクも洗い出し、法整備やガイドライン、運用ルール、教育などを通じて、社会全体としてバランスよく導入していくことが重視されます。


2. ネットコミュニケーションと行動指針

この章では、SNSやメールなどオンラインでのコミュニケーションにおいて守るべきルールやマナー、そして一度ネットに出た情報が残り続けるリスクについて解説します。

ソーシャルメディアポリシー

ソーシャルメディアポリシー(ソーシャルメディアガイドライン)は、企業や団体が従業員に対して示す「SNSの使い方のルール」です。
業務上知り得た情報を投稿しないこと、他人を誹謗中傷しないこと、企業のブランドイメージを損なう行為をしないことなどが盛り込まれます。

個人のアカウントであっても、勤務先や所属が分かる場合には企業と結びつけて見られます。そのため、仕事とプライベートを完全に分けているつもりでも、ソーシャルメディアポリシーに従った発信を心がける必要があります。

ネチケット

ネチケット(ネットマナー)は、インターネット上での礼儀やマナーのことです。
顔が見えない相手と文字だけでやりとりする場では、言葉がきつく伝わりやすく、誤解も生まれやすくなります。そのため、丁寧な言葉遣いを心がける、相手の立場を考えて発言する、深夜の連投を控えるなどの配慮が大切です。

また、著作権を尊重して画像や音楽を無断転載しないこと、他人の個人情報を勝手に投稿しないことも、基本的なネチケットの一部です。ネットは公共の場と意識して行動することが求められます。

チェーンメール

チェーンメールは、「このメールを○人に送らないと不幸になる」「拡散しないと困っている人を助けられない」などと書かれた、転送を促すメールやメッセージのことです。
ほとんどの場合、内容は事実に基づいておらず、デマや迷惑行為の原因になります。

チェーンメールを受け取った場合は、内容を鵜呑みにせず、信頼できる情報源で確認し、転送せずに削除することが基本です。安易な拡散は、結果的に他人の時間を奪い、不安を広げる行為になります。

デジタルタトゥー

デジタルタトゥーは、一度インターネット上に投稿された情報が、半永久的に残り続けることを指す言葉です。
自分で投稿を削除しても、画面のスクリーンショットや、コピーされたデータがどこかに残っている可能性があります。

若い頃に勢いで投稿した写真や発言が、就職活動や転職時に問題になるケースもあります。ネットに情報を載せる前に、「数年後に見られても困らないか」「家族や上司に見られても問題ないか」を一度立ち止まって考える習慣が重要です。

ヘイトスピーチ

ヘイトスピーチは、人種、国籍、宗教、性別、性的指向などを理由に、特定の個人や集団を差別・侮辱する表現のことです。
このような表現は、相手を深く傷つけるだけでなく、社会の分断や対立を生み出します。多くの国や地域では、差別的な表現を規制する法制度やガイドラインが整備されつつあります。

SNS上では、ヘイトスピーチが拡散されやすくなるため、差別的な投稿を見かけても安易に「いいね」や共有をしない、通報機能を活用するなどの対応が求められます。


3. 情報の信頼性と表現リスク

この章では、データや記事がねつ造される問題や、フェイクニュース・偏った情報拡散など、情報の信頼性に関わるリスクと、その見破り方について解説します。

データのねつ造・改ざん・盗用

データのねつ造は、本来存在しないデータを「あるかのように」作り出すこと、改ざんは、実際のデータを書き換えること、盗用は、他人のデータを無断で自分の成果のように利用することです。
これらはいずれも、研究や業務の信頼性を根底から損なう重大な不正行為です。

企業の業績データを改ざんして投資家をだます行為や、研究論文のデータをねつ造して成果を誇張する行為などは、法的責任や社会的信用の喪失につながります。データを扱うときは、出どころや加工履歴を明確にし、再現性を保つことが重要です。

フェイクニュース

フェイクニュースは、故意に作られた虚偽の情報や、誤解を招くような偏った情報をニュース形式で流すものです。
SNSや動画サイトを通じて瞬時に広がり、多くの人が信じてしまうと、社会的混乱や特定の個人・企業・団体への風評被害を生むことがあります。

フェイクニュースに惑わされないためには、情報源が信頼できるかどうかを確認すること、複数の媒体で同じ内容が報じられているかを見ること、感情をあおる見出しに注意することが有効です。

エコーチェンバー

エコーチェンバーは、自分と似た意見を持つ人たちの情報ばかりが集まることで、同じ考えが反響し合い、偏りが強まっていく現象です。
SNSでは、自分と意見の合う人をフォローしやすく、反対意見や異なる視点がタイムラインに流れてきにくくなるため、エコーチェンバーが起きやすくなります。

エコーチェンバーに陥ると、「自分たちの考えこそが多数派で正しい」と思い込みやすくなり、違う意見を持つ人への攻撃や分断を生み出すことがあります。意識的に異なる立場の情報も見る姿勢が大切です。

フィルターバブル

フィルターバブルは、検索エンジンやSNSのアルゴリズムが、ユーザーごとに「好みそうな情報」を自動的に選別して表示することで、見える情報が偏ってしまう状態です。
ユーザーにとっては便利ですが、知らないうちに他の重要な情報が除外されてしまう可能性があります。

たとえば、ある政治的立場の記事をよく読む人には、その立場に近い情報ばかりが表示され、反対意見や中立的な解説に触れにくくなります。検索ワードを変えて調べる、異なるメディアを併用するなどして、フィルターバブルの影響を和らげることが大切です。

ファクトチェック

ファクトチェックは、ニュースや情報の内容が事実に基づいているかどうかを、客観的な資料や複数の情報源をもとに検証する行為です。
専門のファクトチェック機関やメディアも存在し、フェイクニュース対策に重要な役割を果たしています。

個人レベルでも、怪しい情報を見かけたら、そのまま共有するのではなく、公式発表や信頼できるメディアの記事を確認することができます。情報の送り手だけでなく、受け手にもファクトチェックの姿勢が求められる時代です。


4. プラットフォームと法的な対応

この章では、SNSなどの情報流通プラットフォームで問題が起きたときの法的な対応や、有害サイトへのアクセスを制限する仕組みについて解説します。

情報流通プラットフォーム対処法

情報流通プラットフォーム対処法は、SNSや動画サイトなどの情報流通プラットフォーム上で、権利侵害が発生した場合の対応を定めた法律です。
具体的には、発信者情報開示請求、送信防止措置依頼、侵害情報の削除手続の迅速化や運用状況の透明化などが含まれます。

たとえば、名誉毀損となる投稿や著作権侵害のコンテンツが掲載された場合、被害者はプラットフォーム運営者に対して削除や投稿者情報の開示を求めることができます。これにより、被害者の救済を図るとともに、プラットフォーム側にも適切な対応を行う責任が求められています。

有害サイトアクセス制限(フィルタリングとペアレンタルコントロール)

有害サイトアクセス制限は、暴力的・性的・違法な内容を含むサイトなど、子どもや特定の利用者にとって望ましくないサイトへのアクセスを制限する仕組みです。
代表的な方法として、フィルタリングとペアレンタルコントロールがあります。

フィルタリングは、あらかじめ指定されたカテゴリやURLリストにもとづいて、有害と判断されたサイトへのアクセスを自動的にブロックする仕組みです。学校や企業のネットワーク、スマートフォンの契約などで広く使われています。
ペアレンタルコントロールは、保護者が子どもの端末の利用時間や利用できるアプリ・サイトの種類を設定する機能です。これにより、子どもが年齢にふさわしくないコンテンツに触れる機会を減らすことができます。

これらの仕組みは、完全にリスクをゼロにするものではありませんが、インターネットを安全に利用するための重要な補助となります。


まとめ

情報倫理は、「何をしてはいけないか」だけでなく、「どのように情報と付き合っていくか」を考えるための土台です。
データ駆動型社会では、AIが扱うデータや個人情報、プライバシー、秘密保持にいっそう注意を払う必要があります。また、SNSやネット上でのマナー(ネチケット)、ソーシャルメディアポリシーの遵守、チェーンメールやデジタルタトゥーへの理解も欠かせません。

さらに、データのねつ造・改ざん・盗用、フェイクニュース、エコーチェンバー、フィルターバブルといった、情報の信頼性や偏りの問題も意識する必要があります。そのうえで、ファクトチェックを行い、情報流通プラットフォーム対処法や有害サイトアクセス制限などの仕組みを活用しながら、ELSIの観点から技術と社会のバランスを考えることが重要です。

一人ひとりが情報倫理を理解し、日常のネット利用や業務の中で実践していくことで、データとAIが活かされるより良い社会に近づいていきます。

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この記事を書いた人

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の活動を陰ながら応援している、しがないソフトウェアエンジニア。
サトシ ナカモトの戦友。
ITやソフトウェアに関することをわかりやすくまとめ、多くの人にそれらを知ってもらおうと活動しています。
ご質問やご要望、お仕事依頼がございましたらお問合せフォームよりお願いいたします。

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