【ITパスポート試験】No.008|意思決定

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問題を効率よく解決するには、「なんとなく」ではなく、根拠のある意思決定が欠かせません。この記事では、デシジョンツリーやモデル化、シミュレーション、最適化といった代表的な手法と、在庫管理・与信管理・発注方式などの業務への応用について、ITパスポート試験のシラバス範囲に沿って整理して解説します。


目次

1. デシジョンツリーとモデル化で選択肢を整理する

この章では、意思決定の土台となる「問題をモデルとして表現する」という考え方と、その代表例であるデシジョンツリー、確定モデル・確率モデルについて説明します。現実の複雑な状況を整理して、選択肢と結果を見える化するイメージです。

デシジョンツリー

デシジョンツリーは、意思決定を「木の枝」のような図で表現する手法です。ある条件に対して取れる選択肢を枝分かれで書き出し、その先に起こりうる結果や利益・損失を並べていきます。
こうすることで、どの選択肢が最も望ましいかを、直感ではなく、比較できる形で検討できるようになります。リスクが大きいがリターンも大きい案と、安定しているがリターンが小さい案などを客観的に比べるときに役立ちます。

モデル化

モデル化とは、現実世界の現象を数式や図、ルールなどで単純化して表現することです。実際のビジネスは要素が多すぎてそのままでは分析しづらいため、重要な要素だけを抜き出し、分かりやすい形に変換します。
ITパスポート試験の範囲では、モデル化の代表として「確定モデル」と「確率モデル」が登場します。

確定モデル

確定モデルは、「同じ条件なら必ず同じ結果になる」と考えるモデルです。例えば、「1個100円の商品を10個仕入れたら、仕入れ金額は必ず1000円」というように、結果が固定的な場面を扱います。
需要がほぼ読み切れている場合や、変動要素が少ない工程の計画など、安定した状況を考えるときに使われます。

確率モデル

確率モデルは、「結果がいくつかのパターンになり、その起こりやすさが確率で表される」と考えるモデルです。例えば、需要が「多い・普通・少ない」のどれになるか分からない場合、それぞれに確率を設定して分析します。
不確実性が高いビジネス環境では、確率モデルを使って「どれくらいの確率で損をするか」「平均するとどれくらいの利益になりそうか」といった評価が重要になります。


2. シミュレーションと予測で未来を試してみる

この章では、現実の世界をコンピュータの中で再現し、結果を試してみる「シミュレーション」と、それを活用したデータ同化や予測について説明します。実際にやってみる前に、仮想的に試してみるイメージです。

シミュレーション

シミュレーションは、作成したモデルを使って「もしこうしたらどうなるか」をコンピュータ上で実験する手法です。例えば、在庫を減らしたら欠品はどれくらい増えるか、発注頻度を変えたらコストはどう変わるか、などを試すことができます。
現実で試すとコストがかかったりリスクが大きかったりする場合でも、シミュレーションなら安全に比較できます。

シミュレーションのデータ同化

シミュレーションのデータ同化とは、シミュレーション結果と実際の観測データを組み合わせて、モデルの精度を高める考え方です。
例えば、予測した在庫推移と実際の在庫実績がずれているなら、その差をもとにモデルのパラメータを調整します。こうしてシミュレーションを現実に近づけることで、将来の予測や意思決定の信頼性が高まります。

予測

予測は、過去や現在のデータをもとに、将来の値を推定することです。売上予測、需要予測、故障予測など、ビジネスの多くの場面で使われます。
予測の結果は、在庫量の設定、要員配置、投資判断などの意思決定に直結します。シミュレーションやモデル化と組み合わせることで、より現実的で根拠のある計画を立てることができます。


3. データ分析と最適化でベストな答えを探す

この章では、データから特徴やルールを取り出すグルーピングやパターン発見、そしてその結果を利用して最も良い案を選ぶ最適化について説明します。大量のデータを、意思決定に使える「知識」に変えていくイメージです。

グルーピング

グルーピングは、似た特徴を持つデータをまとめてグループに分けることです。例えば、顧客を購入頻度や金額で分けて「よく買う人」「たまにしか買わない人」などのグループを作るようなイメージです。
この結果をもとに、グループごとに戦略を変えることで、より効果的な施策や意思決定ができるようになります。

パターン発見

パターン発見は、データの中から「よく一緒に起こる組み合わせ」や「一定のルール」を見つけることです。例えば、「この商品を買う人は、あの商品も買いやすい」といった関係性を見つけることができます。
こうしたパターンを知ることで、レコメンド(おすすめ表示)やキャンペーン設計など、意思決定の質を高めることができます。

最適化

最適化は、与えられた条件のもとで「最も良い」解を探すことです。「最小のコスト」「最大の利益」「最短時間」など、何を最適にしたいか(目的)を定め、その目的を最大化・最小化するような解を見つけます。
制約条件として「在庫はこの範囲に抑える」「人員はこの人数まで」などを設定し、その中でベストな組み合わせを探すことで、合理的な意思決定につながります。


4. 業務への応用:在庫・与信・発注で考える意思決定

この章では、これまでの考え方が、在庫管理や与信管理、発注方式といった具体的な業務でどのように活用されるかを説明します。実際のビジネスでは、データとモデルを使って条件を整理し、最適な判断を行います。

在庫管理

在庫管理では、「欠品は避けたいが、在庫を持ちすぎるとコストが増える」というジレンマがあります。ここで、需要予測やシミュレーション、最適化の考え方を使うことで、「どれくらい在庫を持つのが妥当か」を決めることができます。
確定モデルや確率モデルを用いることで、需要が一定の場合と変動する場合の違いも評価できます。

与信管理

与信管理は、取引先や顧客にどれだけの信用(支払い能力)を認めるかを判断する業務です。過去の支払い状況や財務情報をグルーピングやパターン発見で分析し、「このタイプの顧客は延滞のリスクが高い」などを把握します。
その結果をもとに、与信限度額の設定や取引条件の決定といった意思決定を行います。

発注方式

発注方式は、「いつ」「どれだけ」発注するかのルールを指します。例えば、在庫が一定以下になったら発注する方式や、一定の周期でまとめて発注する方式などがあります。
需要予測、在庫コスト、発注コストなどをモデル化し、シミュレーションや最適化によって、自社にとって最も効率的な発注方式を検討します。

与えられた条件の下での意思決定

ビジネスでは、「予算はこの範囲」「人員は何人まで」など、さまざまな制約条件が存在します。その中で最適な案を選ぶには、条件を明確にし、モデル化や最適化を使って比較することが重要です。
ITパスポート試験では、このように「条件付きでどのように判断するか」を意識しておくと、関連する問題に対応しやすくなります。

在庫管理を題材にした業務把握

在庫管理は、入荷・出荷・保管コスト・リードタイムなど、多くの要素が関係する業務であり、意思決定の学習題材としてよく用いられます。
在庫の流れを図にしたり、デシジョンツリーやシミュレーションで表現したりすることで、業務プロセスの全体像がつかみやすくなります。これにより、「どこを改善すれば効率が上がるか」といった観点で業務を把握しやすくなります。


まとめ

意思決定の分野では、

  • デシジョンツリーやモデル化で問題を整理し、
  • シミュレーションや予測で未来の結果を想定し、
  • グルーピング・パターン発見・最適化でデータから最善策を導き、
  • 在庫管理・与信管理・発注方式などの具体的な業務に適用する、
    という流れが重要になります。

ITパスポート試験では、これらの用語の定義だけでなく、「なぜその手法が意思決定に役立つのか」「どのような業務で使われるのか」をイメージできると、理解がぐっと深まります。

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この記事を書いた人

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の活動を陰ながら応援している、しがないソフトウェアエンジニア。
24歳。
ビットコインの生みの親・サトシ ナカモトの兄弟。
ITやソフトウェアに関することをわかりやすくまとめ、多くの人にそれらを知ってもらおうと活動しています。
ご質問やご要望、お仕事依頼がございましたらお問合せフォームよりお願いいたします。

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