この記事では、企業の「業務を正しく把握する」ための基本的な考え方と、情報収集の代表的な手法であるアンケート・インタビュー・フィールドワーク、そして業務フローによるビジュアル表現について整理します。現場の実態をどう集めて、どう図にまとめればよいかがイメージできるように解説していきます。
1. 情報収集で業務を理解する

この章では、業務内容を把握するために現場から情報を集める方法について説明します。どれも「現状を正しく知る」ために欠かせない手法です。ITパスポート試験では名称や特徴が問われやすいので、目的と違いをセットで押さえておくと理解しやすくなります。
アンケート
アンケートは、質問票を配布して多くの人から回答を集める情報収集の方法です。紙やWebフォームなど、同じ内容の質問を多数の人に一斉に聞けることが特徴です。
多くの人の意見や実態を、短時間で幅広く集めたいときに向いています。たとえば、「どの業務で時間がかかっているか」「どのシステムが使いにくいか」といった傾向をつかむのに便利です。
一方で、自由な会話がしづらく、回答者が選択肢の範囲でしか答えられないという弱点もあります。そのため、アンケートだけに頼るのではなく、後述のインタビューやフィールドワークと組み合わせることが効果的です。
インタビュー(構造化・半構造化・非構造化)
インタビューは、担当者などに直接話を聞いて情報を集める方法です。質問のしかたによって、次の3種類に分けられます。
- 構造化インタビュー
あらかじめ質問内容や順番をきっちり決めておき、その通りに質問していく方法です。回答結果を比較しやすく、聞き漏れが少ない点がメリットです。複数部門から同じ項目で情報を集めたいときに向いています。 - 半構造化インタビュー
大まかな質問項目は決めておきつつ、会話の流れに応じて質問を追加したり順番を変えたりする方法です。現場の事情に合わせて柔軟に話を深掘りできるため、実務でもよく使われます。 - 非構造化インタビュー
事前に細かい質問を決めず、自由な会話を通じて情報を引き出す方法です。雑談を交えながら話を聞くイメージで、相手が気づいていない課題や本音を引き出しやすい反面、話が散らばりやすいという難しさもあります。
インタビューは、アンケートでは拾いきれない「具体的な手順」や「困っているポイント」「暗黙のルール」など、深い情報を集めるのに適しています。
フィールドワーク
フィールドワークは、現場に実際に出向き、作業を観察したり一緒に体験したりして情報を集める方法です。オフィスのデスクだけでは見えない、リアルな業務の様子を把握できる点が最大の特徴です。
たとえば、倉庫作業や窓口業務、製造現場などを直接見て回ることで、「頻繁に行き来してムダな動きが多い」「紙の伝票を何度も書き直している」といった問題に気づきやすくなります。
現場を自分の目で見ることで、「担当者の説明」と「実際の作業」のギャップも確認できます。観察を通じて得た情報は、後で業務フローを作成するときの貴重な材料になります。
2. 業務フローで業務を見える化する

この章では、集めた情報を整理して「業務フロー図」という形でビジュアル表現する考え方を説明します。業務フロー図は、「誰が・何を・どの順番で行っているか」を図として表すもので、業務の全体像を共有したり、ムダや改善ポイントを見つけたりするのに役立ちます。
業務フロー図
業務フロー図とは、業務の手順や流れを図で表したものです。四角や丸、矢印などの記号を使って、「作業」「判断」「文書」「担当部署」などを分かりやすく表現します。
たとえば、請求金額の決定から入金&請求管理システムの更新までを業務フロー図にすると、各タスクが矢印でつながれ、どの担当者がどのタスクを行っているかが一目でわかります。
業務フロー図を作成すると、次のようなメリットがあります。
- 手順の抜けや重複を発見しやすくなる
- 担当者間の引き継ぎや連携のタイミングを確認できる
- 新人教育やマニュアル作成に流用しやすい
アンケート・インタビュー・フィールドワークで集めた情報をもとに、現状の業務フロー図を作ることで、「現状把握」と「改善ポイントの整理」がスムーズに進みます。
まとめ
業務の把握では、「情報収集」と「ビジュアル表現」の両方が重要になります。アンケートで広く意見を集め、インタビューで詳しく掘り下げ、フィールドワークで現場を直接確認することで、業務の実態を立体的に理解できます。
そして、得られた情報を業務フロー図としてまとめることで、関係者全員が同じイメージを共有でき、課題や改善策を話し合いやすくなります。試験対策としては、各手法の特徴と目的、業務フロー図が「業務の流れを視覚的に表現するもの」であることを押さえておくとよいでしょう。



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